内容説明
日本には、「草木国土悉皆成仏」という偉大な思想がある―。原発事故という文明災を経て、私たちは何を自省すべきか。デカルト、カント、ニーチェらを俎上に近代合理主義や人間中心主義が置き去りにしてきたものを吟味、人類の持続可能な未来への新たな可能性を日本の歴史のなかに見出す。ここに、「人類哲学」が誕生する。
目次
第1章 なぜいま、人類哲学か(哲学とは「人間はどう生きるべきか」を自分の言葉で語るもの;原点となった戦争体験 ほか)
第2章 デカルト省察(なぜ、デカルトか;『方法序説』の誕生;第一~第四の方法―学問の方法 ほか)
第3章 ニーチェ及びハイデッガー哲学への省察(ニーチェ;ハイデッガー)
第4章 ヘブライズムとヘレニズムの呪縛を超えて(ヨーロッパ文明の父と母;ヘブライズムと近代 ほか)
第5章 森の思想(草木国土悉皆成仏;水を守るもの ほか)
著者等紹介
梅原猛[ウメハラタケシ]
1925年宮城県生まれ。哲学者。京都大学文学部哲学科卒業。京都市立芸術大学学長、国際日本文化研究センター初代所長などを歴任。現在、同センター顧問。99年、文化勲章受章。72年に『隠された十字架 法隆寺論』で毎日出版文化賞、74年に『水底の歌 柿本人麿論』で大佛次郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
27
3.11による原発事故の反省から、科学技術文明だけを全面的に肯定した思想だけで人類は存続できるのかという問題意識を持ち、縄文の基層に外来の仏教が影響を受けた結果生まれた思想である「草木国土悉皆成仏」を提唱する。本書だけを読むのであれば、単なる文化論に終わります。西洋哲学の章は良く読めて、東洋哲学の章は引っ掛かるところが無かったという感想は、他者に出会っていないので勿体ない。西洋哲学と東洋哲学の統合を目指す思索の奥深さに気付けば、本書には数々のヒントがあり、派生的に読書を進めるにはうってつけの本です。2020/04/02
yamahiko
23
難しいことを平易な文章語ることのできる達人の書です。するりと読めてしまうため、うっかり読んでいると、著者の論を軽んじてしまったり、あるいは、何も印象に残らないということになりかねない危険を孕む一冊だとかんじました。2018/01/31
魚京童!
21
近代西洋文化の父文明・母文明は、ギリシャ文明とユダヤ文明である2014/09/30
呼戯人
19
先ごろ亡くなった梅原猛の晩年の著書。仏教に基づく日本思想を普遍性のレベルにまで高め、人類の危機に対処する哲学を構築するという野心的な試み。草木国土悉皆成仏という天台密教の教えを基礎として、デカルト、ニーチェ、ハイデッガーなどと対決して、哲学の新しい水準に立とうする梅原の根源的批判の試み。人間中心主義から抜け出られない西洋哲学の旧弊を突破し、狩猟採集文化の結晶としての「草木国土悉皆成仏」の思想を西洋近代を乗り越えるものとして洗練させようとしている。87歳でこれだけの稀有壮大な大志を抱けるとは並の人ではない。2019/03/10
Bartleby
14
デカルト、ニーチェ、ハイデッガーなどから西洋哲学の問題点を探り、「草木国土悉皆成仏」や太陽信仰などの東洋的な発想によってそれを乗り越えようとすることが試みられている。草木国土悉皆成仏については面白いけれど論理より共感に訴える感じになってしまっていると思う。ただまだこれは序説で、これから新しい哲学を語ろうとする意気込みはすごいと思う。2013/05/28