岩波新書<br> 百年前の日本語―書きことばが揺れた時代

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岩波新書
百年前の日本語―書きことばが揺れた時代

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  • サイズ 新書判/ページ数 195p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784004313854
  • NDC分類 810.2
  • Cコード C0281

出版社内容情報

漱石が自筆原稿で用いた字体や言葉の中には,すでに日本語から「消えて」しまったものがある?──百年前の書きことばが備えていた,現代では思いもつかない豊かな選択肢.その後活字印刷がひろまり,「読み手」が急速に増大したことで,日本語はどのように変わったのだろうか.豊富な具体例を通じて描く,画期的な日本語論.

内容説明

漱石が自筆原稿で用いた字体や言葉の中には、すでに日本語から「消えて」しまったものがある?―百年前の書きことばが備えていた、現代では思いもつかない豊かな選択肢。活字印刷が急速に発達した時代の、私たちが知らない“揺れる”日本語の姿を克明に描き、言葉の変化の有り様を問う、画期的な日本語論。

目次

第1章 百年前の手書き原稿―夏目漱石『それから』の自筆原稿(漢字のかたち―漱石の書いた「所」の字;漱石も「新字体」を使っていた;手書きと印刷との間で)
第2章 「揺れ」の時代―豊かな明治期の書きことば(日本語を漢字によって書く;活躍する振仮名;語形の多様性;書き方の多様性―同語異表記・異語同表記;和漢雅俗の世紀―漢英対照から和漢雅俗へ)
第3章 新しい標準へ―活字印刷のひろがりと拡大する文字社会(『朝日新聞』に掲載された夏目漱石の『それから』;新聞紙面の日本語;雑誌の日本語)
第4章 統一される仮名字体―失われた選択肢(仮名のさまざまな使い方;一九〇〇年のできごと;消えた「仮名文字遣い」)
第5章 辞書の百年―辞書を通してみた日本語の変化(英和辞書の訳語;漢語辞書から考える;和語・漢語・外来語)

著者等紹介

今野真二[コンノシンジ]
1958年神奈川県生まれ。1986年早稲田大学大学院博士課程後期退学。高知大学助教授を経て、清泉女子大学教授。専攻は日本語学。著書に『仮名表記論攷』(清文堂出版、第30回金田一京助博士記念賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

117
地味な内容の本だが、私には面白くて興奮しながら読んだ。明治時代には表記の揺れのあったことが述べられている。その例として、多く使われているのは夏目漱石の手書きの原稿。例えば、『それから』の原稿では楷書体以外に、草書体や行書体が使われている。明治期には現代の日本語のように書体が統一されていなかった。他にもさまざまな書物を例に取りながら、表記の揺れを紹介する。例えば「有難い」は「難有い」と書かれることもあった。明治の頃は、現代より言葉が多様で豊かだったのかもしれない。(続きます)2018/05/18

チャーリブ

38
題名は、むしろ「明治期の日本語」というほうがふさわしいでしょう。維新後は、社会体制と同じく日本語も揺れていた時期ですが、本書は、書き言葉についてその揺れを考察したものです。漱石の『それから』の自筆原稿の漢字に「新字体」が使われていたのは興味深いです。戦後に生まれた当用漢字表の「簡易字体」は、当時慣用されていた簡略字体から取られたもので、ここから「新字体」「旧字体」という区別が生まれたんですね。手書きの煩雑さが消えつつある現在、日本語の漢字はどこへ向かっているのでしょうか…。2023/08/02

katsubek

23
表記方法に的を絞ったところが面白い。漢字の使い方も面白いし、仮名づかいも興味深かった。2013/12/29

bapaksejahtera

20
近代日本の書記言語について、新たなメディアである新聞や図書、官庁文書を材料に、画期とその態様を探る本。しかしその述べる通り、単純な素地に簡単な導因が及んだ結果、明瞭な変化が生じたのではない事がよく理解される。よって論証には困難が伴い、短い紙幅で尽くせるものではない。それでも本書により、開化期以前に一音節に複数が宛てられた変体仮名も恣意的な用い方をのみされたのではない事、表記の規範としての漢語漢字音の歴史、白話小説等から招来された新たな漢語の位置づけ、活字文化の影響等々、改めて目を開く記述に溢れる良書である2023/02/03

naotan

13
「不特定多数への情報発信」という言葉から、私たちはインターネットを想像するけど、相手のいる「手書き文字」から、新聞や雑誌の「活字印刷」へ転換していった時代もまた、大きな変動だったんだなあ。2013/12/17

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