内容説明
大古典『論語』から精選した百四十六条を味読する。その無類の面白さの中核は、孔子という人物にある。約二千五百年のはるかな時を超えて立ち上がる、臨場感あふれる弟子たちとの対話のなかに、不遇にあって大らかさを失わず、ときに笑い、怒り、慟哭しながら、明朗闊達な精神をもって生きぬいた孔子の、稀有の魅力を読みとく。
目次
第1章 孔子の人となり(みずから語る生の軌跡;実践としての学び;生活のなかの美学)
第2章 考えかたの原点(核となるキーワード;政治理念と理想の人間像)
第3章 弟子たちとの交わり(教育者としての孔子;大いなる弟子たち;弟子、孔子を語る;受け継がれゆく思想)
第4章 孔子の素顔(ユーモア感覚;不屈の精神;激する孔子;嘆く孔子;辛辣な孔子;楽しむ孔子)
著者等紹介
井波律子[イナミリツコ]
1944年富山県に生まれる。1966年京都大学文学部卒業。1972年同大学院博士課程修了。金沢大学教授、国際日本文化研究センター教授を経て、国際日本文化研究センター名誉教授。専攻は中国文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ねこ
124
渋沢栄一の「論語と算盤」を読んで論語に興味を持ちこの本を読みました「論語」は2500年程前に孔子の直弟子達が師との語らいを記録し後の弟子達が収集•整理し、編纂し20遍に纏めた書物です。 子曰く、性相い近き也。習い相い遠き也。 (先生は言われた。「人のもともとの素質にはそれほど個人差はない。ただ、後天的な習慣•学習によって距離が生じ遠く離れる」)孔子は基本的に弟子に対しても民衆に対しても心優しい君子であったと感じました。本書を読む前、孔子は仙人の如く人類を超越した至高の御方と勘違いしていました。語音もいい。2022/10/09
著者の生き様を学ぶ庵さん
44
大学受験以降、久々の漢文学習。學而時習之、不亦說乎(學びて時に之を習ふ、亦說しからずや)という気分です。學而不思則罔、思而不學則殆(學びて思はざれば則ち罔し、思ひて學ばざれば則ち殆し)。読書ばかりで、考えが足りない私にはノックアウトパンチです。そうそう、筆者は宮城谷昌光先生の「介子推」で解説を書いていた井波律子教授。分かり易い入門書です。読み下し文も入門者向けにアレンジされています。中級になると、「死ぬ」(ナ変)は使わず、「死す」(サ変)を使う等を学ぶはずです。例)板垣死すとも自由は死せず(×死なず)。2016/11/02
はるわか
12
『論語』の中核をなすのは孔子の対話の記録である。孔子の著書ではなく、顔回、子貢、子路をはじめとするユニークで優秀な弟子たちと向き合い、語り合った対話の記録であることが、この書物の他に類を見ない魅力の源泉となっている。孔子の生涯は不遇の連続というほかない。しかし、本質的に孔子は身も心も健やかにして明朗闊達、躍動的な精神の持ち主であった。いかなる不遇のどん底にあってもユーモア感覚たっぷり、学問や音楽を心から愛し、日常生活においても美意識を発揮するなど、生きることを楽しむひとだったのである。2019/12/04
こつ
11
名言がやたら滲みて、自分も大人になったんだなぁと思いました。師である孔子も弟子たちもキャラが立っていて面白いです。実在の人物だったのがピンとこないぐらいです。2019/10/29
或るエクレア
10
孔子先生は偉人ではあるけど、社会的地位に恵まれずぼやいてばっかりなところに人間臭さがして好感が持てる。かっこつけたり厳格主義に陥ったりしない、のびのびまったりした文体も当時の孔子教団の雰囲気が伝わってくるようで(・∀・)イイ!!2016/07/09