出版社内容情報
木の根と共生し,落ち葉を分解して,菌類はひっそりと森を支えている.キノコは菌類の繁殖装置.まわりの栄養を吸いあつめておいしくなるが,放射性物質まで濃縮してしまう.植物とも動物とも異なる宿命のもと,共生へと進化したキノコの教えをいま人類は学ぶべきではないか.食と環境と生命をめぐる興味深い話題を満載.(カラー口絵一丁)
内容説明
木の根と共生し、木材や落ち葉を分解して、菌類はひっそりと森を支えている。キノコは菌類の繁殖装置。植物とも動物とも異なる宿命のもと共生へと進化したキノコの教えをいま人類は学ぶべきではないか。マツタケやトリュフ栽培の苦心、キノコと炭による松林の再生、放射能を集めるキノコなど、食と環境と生命をめぐる興味深い話題を満載。
目次
1 日陰者のつぶやき
2 これ食べられますか
3 夢を追って
4 腐らせること
5 森を支えるキノコ
6 環境異変を告げるキノコ
7 マツを助けたショウロ
8 キノコの教え
著者等紹介
小川眞[オガワマコト]
1937年京都府生まれ。京都大学大学院農学研究科修了、農学博士。専攻は菌類学。森林総合研究所土壌微生物生物研究室長、同きのこ科長、関西総合テクノス、生物環境研究所を経て、大阪工業大学客員教授。日本林学賞、国際林業研究機関連合ユフロ学術賞、日経地球環境技術賞、日本菌学会教育文化賞、愛・地球賞などを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
86
いまキノコの本がマイブーム。図書館で見かけたので一気読み。この本はキノコが自然界のなかでいかに大事な役割を果たしているかを食や環境、災害などの関わりがわかりやすく書かれている。特に放射性物質とキノコの関係や震災で被災し消えてしまったマツ林のことは興味深く読むことができた。たかがキノコと言えど松茸やトリュフのように高級品もあればドクツルタケやカエンタケのように食べればほぼ確実に命取りになるものまで種類は様々でまだ未知のものもあるようだ。キノコ好きの方は一読をおすすめします。2019/11/10
壱萬弐仟縁
26
糸状細胞の菌類が地球上現れた詳細は不明のようである(12頁)。菌類の生活法は、寄生―腐生―共生―寄生というような逆三角形構造(19頁)。毒キノコの見分け方も、なかなか素人にはわからない(30頁~)。キノコ食べる動物は、シカやイノシシに実験して彼らに犠牲になってもらう以外ないのだろうか?(34頁) 中山間地域の学術としては、民俗学、史学のみならず、こうした細菌学や先ほどみた発酵学のような学問も重要であろう。2014/01/23
とく たま
12
キノコの生態だけにとどまらず樹木との共生の重要性、人間倫理・地球環境への危惧・危急へと思いを致す。人類への警告にも聞こえる。人類にとって菌類は重要なファクターである。小川眞先生に続く研究者が育ってほしいと心底思う。キノコが愛らしく感じてくる。子実態という目に見えるものでなく自然に共生する菌糸たちにだよ!落ち葉を拾い土をめくりたくなってきた。キ~ノコの子・・♪ ('◇')ゞ2017/04/29
mawaji
11
キノコと放射性セシウム137濃縮の問題はやはり原発のあり方を考えさせられます。故郷の砂防林は大丈夫だろうか、キンダケはまだ採れるのだろうかと心配になりました。キノコと共生の論考を読みながらコロナ後の生活のあり方にも思いを馳せました。キノコの教えとは…地球環境問題に関するかぎり、われわれ一人一人が加害者であり、被害者でもあると同時に責任があることを忘れてはならない。「科学は善、進歩は正義」とする思考パターンには、明らかに疑問の余地がある。行き過ぎを是正する科学を育て、「共生の哲学」を広める必要があるだろう。2020/05/24
Humbaba
8
どのようなキノコが毒キノコで,どのようなキノコが食用になるのか.それを見分ける簡単な方法はない.また,キノコは周囲の養分を集める性質があるため,生育環境によっては本来独ではないものが毒になりかねない.自然のキノコを食べる際には,十分な知識を持ってから臨むべきであり,聞きかじりの知識で挑戦すれば手痛いしっぺ返しを食らうことになるだろう.2012/05/22