出版社内容情報
アジア・太平洋戦争時，1939年（昭和14）9月から1945年8月にかけて行われた戦時労務動員について，その計画の策定過程，無謀な動員の実態，動員の中で日常化した暴力，そして動員体制の崩壊までを基本史料をもとに描きだす．「朝鮮人強制連行」といわれるものが，どのようなものであったかを明らかにする一冊．
内容説明
アジア・太平洋戦争時、一九三九年（昭和一四）九月から一九四五年八月にかけて行われた戦時労務動員について、その計画の策定過程、無謀な動員の実態、動員の中で日常化した暴力、そして動員体制の崩壊までを基本史料をもとに描きだす。「朝鮮人強制連行」といわれるものの実態が、どのようなものであったかを明らかにする一冊。
目次
序章 朝鮮人強制連行を問う意味
第１章 立案調査と準備不足の始動
第２章 「余剰」なき労働力の実情
第３章 押しつけられる矛盾
第４章 広がる社会的動揺と動員忌避
第５章 政策の破綻とその帰結
終章 暴力と混乱の背景と要因
著者等紹介
外村大［トノムラマサル］
１９６６年北海道に生まれる。１９９５年早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程中退。早稲田大学社会科学研究所助手、高麗大学校民族文化研究院客員研究員などを経て、２００７年東京大学大学院総合文化研究科准教授。専攻は日本近現代史（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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おおにし
21
基本史料を元に1939年から1945年までの戦時労務動員の実態を調査した本。朝鮮人の動員数が正確に記載されており、実態は拉致に近い強制連行であったことは間違いないだろう。私が本書で一番印象に残ったのは、日本政府の動員計画の杜撰さである。朝鮮の実態を無視した需要面からだけの計画はおよそ無謀なもので、受け入れ体制も未整備で劣悪な労働環境の中、逃亡者が多く出たようだ。今また外国人労働者の導入計画を進めている日本は、この戦時下の動員計画の二の舞を踏むことになりはしないかと不安になる。2020/03/27
春風
7
強制連行ってあったの？無理矢理拉致してきたの？日本人の動員とどう違うの？進んで日本に稼ぎに来た人もいたんじゃないの？などさまざまな疑問に対して、膨大な同時代の一次資料を使って答えてくれる好著。別に強制連行を企んだ巨悪がいたわけではなく、要は現場を知らない上層部が無理な計画を立て、実務に携わる末端にしわ寄せがくるといういつもの日本のパターン。2017/08/15
瓜月（武部伸一）
5
今読むべき本だと思った。言うまでもなく現在進行形の問題の源泉を探るためだ。著者はアジア太平洋戦争時の朝鮮人強制労働の実態を、当時の日本政府と関連する諸団体の史料を丹念に辿ることで明らかにする。強制連行された朝鮮人の証言は補足的に触れられているのみ。それでも当時の大日本帝国が、いかに暴力的に朝鮮人を日本国内に連行したかは明確になる。当時、数10万の朝鮮人労働者は何故どの様に徴用され、労働実態はどうだったのか。日本政府と当該企業自らが明らかにする必要がある。責任と補償を今考えるために。巻末の史料リストも有益。2019/11/17
aeg55
4
"働き手不足を補うために外地から人を募集しよう" と人々をかき集めるが、杜撰な統計数値を元に無計画な政策、現場では労働環境の悪い職場にはいちされ、怪我やしんでしまった人、失踪者多数… 。これは昨年露わになった技能実習生の諸問題ではなく、80年ほど前、国家総動員法に基づき国家施策として行われた事である。強制連行による強制労働は、経済施策に基づき政府から下部組織、朝鮮総督府、府邑面と降りてゆく内に法令は変容し暴力をも伴うようになってくる。経済最優先措置は警察や企業組織、厚生省を介して推進されたのである。2018/12/27
coolflat
4
日中戦争の長期化に直面した日本政府は当初、総力戦への朝鮮人の動員を想定せず、農業への従事を基本としていたが、重労働を伴う炭鉱等では労働力が不足していたという現実があった。炭鉱では労働条件の改善を図ることで、労働力を集めるという施策が行われなかったため、労働力の確保が困難になっていた。そのために朝鮮人の動員が図られたのだが、意外にも1944年まで朝鮮人徴用は行われなかった。朝鮮人の渡日規制が行われていたわけだが、朝鮮人が自由に日本内地に流入して勝手に希望する職に就くことを防止するための施策だったのである。2014/12/07
