岩波新書
漢文と東アジア―訓読の文化圏

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  • サイズ 新書判/ページ数 233,/高さ 18cm
  • 商品コード 9784004312628
  • NDC分類 820
  • Cコード C0280

出版社内容情報

漢文訓読は日本独自のものと思われてきたが、近年新たな資料の発見により東アジアに共通する現象であったことが分ってきた。東アジアの文化理解に訓読の歴史を知ることが必要であることを述べ、漢文文化圏を提唱する。

内容説明

漢文の訓読は従来、日本独自のものと思われてきたが、近年、朝鮮、ウイグル、契丹など中国周辺の民族の言語や中国語自体の中にも同様の現象があったことが明らかになってきた。仏典の漢訳の過程にヒントを得て生まれた訓読の歴史を知ることが東アジアの文化理解に必要であることを述べ、漢文文化圏という概念を提唱する。

目次

第1章 漢文を読む―日本の訓読(訓読とはなにか?;訓読と漢訳仏典;訓読の思想的背景;草創期の訓読―奈良末期から平安中期まで;完成期の訓読―平安中期から院政期まで;訓読の新たな展開―鎌倉時代から近代まで;明治以降の訓読)
第2章 東アジアの訓読―その歴史と方法(朝鮮半島の訓読;新羅の訓読と日本の古訓点;朝鮮半島における訓読の思想的背景;中国周辺の訓読現象;中国の訓読現象)
第3章 漢文を書く―東アジアの多様な漢文世界(東アジアの詩の世界;さまざまな漢文)
おわりに―東アジア漢文文化圏

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

113
訓読は漢文を読むための日本独自の工夫と思っていたが、中国で梵語仏典を漢訳する際のテクニックの応用だったとは。中国周辺の朝鮮、契丹、ベトナムなどの言葉にも訓読に相当するものが存在していたのは、巨大な中国文化を取り入れようと必死だった各国の姿が見えてくる。漢詩漢文という表意文字を通じて東アジアに広く漢文文化圏が形成されたのは、世界の言語史上の奇跡ではないか。しかもアジアで初めて西洋に門戸を開いた日本は漢文概念を含む翻訳を蓄積し、それを通じて中国は西洋文化を逆輸入した。訓読はアジア文化の基盤形成に貢献したのだ。2023/10/28

ヨーイチ

36
漢字で物を考えている身としては漢字、漢文の受け入れ、発達は大切で刺激的な問題で、難しかったけど、面白かった。著者の論旨が仏教伝来・仏典に重きを置いているので、仏典・お経の解説が多くて難渋、もとい流し読みしました、済まん。本家があんなになっていても(中共ね)漢字、漢文を産み育ててきたチャイナは矢張り気になる国なのです。漢字を捨ててしまった韓国、ベトナムにも仏典とか漢文への敬慕の様な物があるのだろうか?あと話し言葉の変化が表記にも影響を与えるってのも目から鱗でした。チャイナだって外国語が沢山入っていた筈だし。2022/03/03

Hatann

15
漢文の訓読は中国にて梵語の仏教経典の漢文を翻訳するために生み出した技法の応用にある。漢文の訓読は日本固有ではなく朝鮮・契丹・ヴェトナム・中国を含めた東アジア一般に生じており、広く漢文文化圏を形成しうる。明治期の日本では、西洋語の知識を翻訳するために訓読の技術を応用し、従来の普遍的言語であった漢文の単語を借用・転用した。中国では西洋から知識を吸収するために日本語による訓読の方法を逆利用した。千年以上前に日本は漢文の訓読を通じて仏典を学び、百年前には中国は日本語の訓読を通じて西洋の諸概念を学んだ。深堀したい。2022/03/21

MUNEKAZ

14
前半は日本における漢文の受容と訓読の発展について述べ、後半は朝鮮、ベトナムなど中国周辺諸国の「訓読」を紹介している。鍵は漢文の受容の際、仏典を使ったこと。もともと語法の異なる梵語を中国語に翻訳する際のお作法が、回りまわって周辺諸国の訓読に影響を与えた。鎌倉時代の僧が、目的語-動詞という順番から「日本語と梵語は同じ」と唱えたというのが面白い。また漢文受容のメインが仏教から儒教に移るにつれ、聖人の教えを直に読むということで、訓読排斥の動きが起こったというのも興味深い。いろいろと勉強になりました。2023/09/23

崩紫サロメ

12
東アジア諸国における漢文訓読の根底に漢訳仏典を読む、という体験があったということを軸に様々な角度から訓読を考える。日本では室町時代の禅僧を中心に訓読を廃止して直読を主張する声が上がった。この点に関しては後半の朝鮮における訓読と比較するとよい。また、梁啓超が「和文訓読法」という日本語から漢文に復元(?)する方法を編み出し、日本語は簡単だという錯覚を与えた、など日本語と中国語の近くて遠い感じも面白い。また、現代中国語はアルタイ諸語の影響を受け動詞の位置が古典語と変わっているという指摘も。2019/11/23

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