出版社内容情報
激動の戦前・戦中から戦後の最晩年まで、新嘗祭など数多くの宮中祭祀に熱心に出席、「神」に祈り続けた昭和天皇。従来軽視されてきた聖域での儀式とその意味に注目し、皇族間の確執なども重ねながら、その生涯を描き直す。
内容説明
新嘗祭、神武天皇祭など頻繁に行われる宮中祭祀に熱心に出席、「神」への祈りを重ねた昭和天皇。従来ほとんど直視されなかった聖域での儀礼とその意味に、各種史料によって光を当て、皇族間の確執をも視野に入れつつ、その生涯を描き直す。激動の戦前・戦中から戦後の最晩年まで、天皇は一体なぜ、また何を拝み続けたのか―。
目次
序章 一九八六年の新嘗祭
第1章 「万世一系」の自覚
第2章 ヨーロッパ訪問と摂政就任
第3章 天皇としての出発
第4章 戦争と祭祀
第5章 退位か留位か
第6章 宮中の闇
著者等紹介
原武史[ハラタケシ]
1962年、東京に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社、東京社会部記者として昭和天皇の最晩年を取材。東京大学大学院博士課程中退。東京大学社会科学研究所助手、山梨学院大学助教授を経て、明治学院大学教授。専攻は日本政治思想史。著書に『「民都」大阪対「帝都」東京』(講談社選書メチエ、サントリー学芸賞受賞)、『大正天皇』(朝日選書、毎日出版文化賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
137
いま実録を読んでいるのですが、それとは別に原さんのこの新書もかなり面白い記述がありました。また宮中の闇という最後のほうでは、女官と入江侍従長の確執があってまるで読み物を読んでいるようでした。三島由紀夫が「豊饒の海」のために宮中を訪れたことも書かれています。2015/11/01
Nat
38
図書館本。原さんと三浦しをんさんの対談集をきっかけに原さんの著作に興味をもった。大正天皇から読もうと思っていたのに、ついつい持ち運びやすい新書版の昭和天皇から読んでしまった。色々考えさせられた。戦争責任から貞明皇后や高松宮との確執など。神から人間になったわけだが、本心はどうだったのか。誰にも真実はわからないが、二度と戦争にならないことを願う。2021/11/10
おさむ
38
保阪氏との対談本もとても面白かったのですが、一次史料から多面的、立体的に天皇像を浮き彫りにする今作品も読み応えあり。「真実神を敬せざれば必ず神罰あるべし」。過剰なまでに祈祷に傾倒した母・貞明皇太后との長い確執が、昭和天皇に与えた心理的な影響は大きかったんですね。全国紙が宮中祭祀を掲載しなくなって、はや50年。「濠の内側」での天皇の姿が見えにくくなっているからこそ、今上天皇は「濠の外側」での活動に熱心なのかもしれません。2016/12/15
おかむら
32
天皇と鉄道が大好きの原武史さん。「大正天皇」が面白かったのでこちらも読んでみた。公的な面でなく宮中祭祀という私的な面から伺える天皇の姿。実録が公開される前に出た本なので推測が多いかなー。でも母(貞明皇后)や弟(高松宮)との確執は面白い。どの家族にもドラマあり。ただやっぱ天真爛漫キャラの大正天皇に比べるとマジメで面白みに欠ける性格。生物学の研究に熱心だったのも現実逃避か? 激動の時代天皇になってしまってお気の毒な面も。2017/06/08
Yuririn_Monroe
27
私のような平成生まれは、リアルタイムで昭和天皇を知ることが出来なかったため、先日観た昭和天皇についての映画などからそのお姿を見ていた。昭和天皇を知るにはやはり文献が重要。昭和天皇に関する書籍を私が読むのは本作が初。15ページの図が分かりやすくて良い。「形式」と「信仰」はあくまで別物。この「信仰」には天皇が長年行われていた生物学研究のスタンスがやはり表れてると思う。新嘗祭に生物学研究と祭祀の接点を見つけられた聡明さ。晩年まで祭祀にこだわり、万物を愛することに努められていたことが分かった。日本国の象徴。2015/09/17