内容説明
「欧州憲法」制定の挫折、東方拡大による加盟国間の軋轢、域内の経済格差の拡大など、様々な困難に直面し、大きな岐路に立つEU。その壮大な実験は、どこへ向かおうとしているのか。国際社会にどんな影響を与えているのか。各国の文化の違いや利害の対立を調整し、深化・発展してきた仕組みを明快に解説し、その将来像を展望する。
目次
第1部 EUの実像―超国家的統治体の仕組み(EUを知るために―統治機構としてのEU;拡大するEU;変貌するEU―欧州憲法条約からの転換)
第2部 EUを動かす論理―国家主権を超えて(域内市場の論理;自由移動と各国文化;EU市民権の論理;単一通貨の論理―ユーロの仕組み)
第3部 EUの挑戦―国際的共生と対立(国際ルールの形成・発展とEU―法の支配・人権と環境;EUの安全保障戦略;EUは東アジアのモデルとなるか)
著者等紹介
庄司克宏[ショウジカツヒロ]
1957年和歌山県生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得満期退学。二松学舎大学国際政治経済学部助教授、在ベルギー日本国大使館専門調査員(欧州安全保障担当)、ケンブリッジ大学客員研究員、欧州大学院大学(フィレンツェ)客員研究員、横浜国立大学大学院教授などを経て、慶應義塾大学法科大学院教授、日本EU学会理事長(2008年11月まで)、ジャン・モネ・チェア。専攻、EU法(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
32
EUは経済連合から大きく成長しつつある。ただし、加盟国全体の利益に叶う憲法作成となると、必ずしも当事国の民意を反映するとは限らないから当分は難しそうだ。各国裁判所が慣習的にEU法への拒否権を発動しないという立憲的多元主義を採るなど、ずいぶん柔軟にやろうとしているので感心する。二度の大戦を経た欧州にとって、超国家連合への夢は大きいのだろう。異文化間の摩擦や紛争など悩みは続くかもしれないが、ここで揉まれて政治意識が鍛えられることを期待する。グローバル世界のモデルとしてEUから学ぶべき点はたくさんあると思う。2014/02/09
coolflat
14
英国のEU離脱問題から、EUの基本とは何たるかを知りたくなり読んでみた。欧州の超国家的統合が始まった歴史的要因は、第二次大戦後の荒廃と冷戦下における共産主義の脅威だ。また共産主義に対する防波堤としての欧州統合に米国の強い期待があったこと、そのためにフランスとドイツの和解が必要条件として達成されたことも特筆される。更にシューマンやアデナウアーなど強力な指導者が存在したことも要因の一つだ。翻ってアジアはどうか。アジアを統合する強力な指導者は存在しないし、米国は自国を外すようなアジアの統合には一貫して反対した。2016/08/02
オーロラソース
4
EUが分からなすぎるので読んだ.個人的には5章と9章が興味深かったが,歴史的背景にもっとページを割いてほしいと感じた.EUがアメリカと比較して「人間の安全保障」を安保ドクトリンの軸にしている.他の軍事的プロセスとうまく併用することで特に非軍事面で地域の長期的な平和維持に貢献しうることが期待されると思った.EUは「ヨーロッパという地域の歴史的,文化的な背景があってはじめて成立し得たともいえる」が,諸分野での国家統合の一つのいい「ベンチマーク」となりえる.少し分かった気分.2013/03/26
ceskepivo
3
超国家統治体であるEUの制度面を中心とする概説書。「壮大な実験」と言われるが、最近のギリシャの問題にしても、現れてくる一つ一つの問題を解決することによって、EUが強力な統治体になっているとの印象がある。2015/08/16
sk
3
もはや教科書的に読んだ。2014/01/31