内容説明
アジアを中心に流行している鳥インフルエンザ。病原性の強いこのウイルスが人間への感染力を獲得するのは、もはや時間の問題かもしれない。グローバル化が進行する現在の世界において、地球規模の感染症対策を考える際に忘れてはならないことは何か。第一線で対策に奔走する著者が多角的な視点から提言する。
目次
プロローグ―渡り鳥の死
第1章 いま私たちの住む世界―「適切な危機感」を共有するために
第2章 歴史のなかのインフルエンザ―経験・記憶・対策
第3章 ウイルスとの共生を考える医学へ―生態系のなかで
第4章 新型インフルエンザにどう対応するか―国境を越えて
エピローグ―もうひとつの世界
著者等紹介
山本太郎[ヤマモトタロウ]
1964年生まれ。1990年長崎大学医学部卒業。医師、博士(医学、国際保健学)。その後、京都大学医学研究科助教授、長崎大学熱帯医学研究所助教授を経て、現在、外務省国際協力局多国間協力課勤務。専門は国際保健学、熱帯感染症学。アフリカ諸国、ハイチなど開発途上国で感染症対策に従事してきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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活字の旅遊人
20
よりウイルスに対象を狭めて、山本先生が斬る。ちょっと文章が自己陶酔気味にも思えるが、それより内容である。個別対策というより共通の知識・思想であり、ここからどうするか、という起点になる3部作だ。
白義
20
世界的な流行を引き起こしかねないインフルエンザのメカニズムと、過去にパンデミックを引き起こした事例の歴史と分析、対策までインフルエンザに関する基礎知識が身につく。そもそも今では季節性のものとして定着しているインフルエンザもかつては新型だった。そして新型インフルエンザとタイトルについてはいるが基本的に地球規模の感染症にどう対処するのかという話でもあり今日的な応用性も高い。中でもスペイン風邪をはじめとした歴史分析がよく、麻痺する公共インフラや迷信が迷信を生むなど、危険性は流石に段違いだがどこかで聞いた話が多い2020/03/07
naginoha
12
インフルエンザの歴史、感染のメカニズム、など詳しく学べた。今年の冬もインフルエンザ対策を万全にして、どうにかうまく「共生」していけるようにしようと思う。2018/12/05
deerglove
5
インフルエンザには世界的流行と季節的流行があり、そのウイルスが遺伝子再集合するシフトと、アミノ酸配列に変異が起こるドリフトという二つの変化があるとの話が非常に興味深かった。端的にはシフトによって新型インフルエンザが生み出されるそうですが、シフトやドリフトがウイルス生き残り戦略であるとは驚きでした。それにしてもインフルエンザとコロナの違いはあれど、ほぼ現在の状況が正確に予測されているのにも関心しましたね。まだまだ歴史に学ぶべき点は多い。2020/04/08
鬼山とんぼ
3
武漢で発生した新型コロナウイルスはインフルエンザと酷似した性質を持ち、経済に多大な影響を与えるだけでなく中国の政治体制まで影響を及ぼしつつある。正しい知識を仕入れようと本書を手にした。06年の執筆時はインドネシア駐在の少壮学者だった著者も今は長崎大学教授として活躍、おそらくは学内に建設中のレベル4研究施設にも指導者の一人として関与することとなろう。この手の本の定石通りに発生や免疫の機序を概説した後、20世紀に大流行した3つのインフルエンザの概要が語られている。こういう先生が頑張るなら、長崎大を応援したい。2020/02/23