内容説明
かつて若い国、自由の国として世界から愛されたアメリカは、いま巨大な軍事力に支えられた「大米帝国」として嫌われ、衰退に向かうかに見える。やがて老醜をさらすことになるのだろうか。半世紀以上、リベラルな立場から歴史家としてこの国とつき合ってきた著者が、その心象風景に重ねて米国の明暗を描き、今後の進むべき道を提示する。
目次
序章 アメリカは若い国か
第1章 アメリカが愛されていた頃
第2章 “天国”のなかの“地獄”
第3章 “天国”のなかの混沌
第4章 アメリカが嫌われるようになって
終章 アメリカよ、美しく年をとれ
著者等紹介
猿谷要[サルヤカナメ]
1923年東京に生まれる。1948年東京大学文学部卒業。その後同大学院修了。日本大学、東京女子大学、駒沢女子大学教授、およびハーヴァード大学、ハワイ大学、コロンビア大学、エモリー大学、コロラド大学などの客員研究員を歴任。東京女子大学名誉教授。専攻はアメリカ史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
70
16年も積読だった本を一気に読了。当時すでに老境のアメリカ史家が、自らの体験を踏まえてエッセー風に様々な事象を捉えて論評している。そこには著者のアメリカに対する憧憬と、子ブッシュ時代(イラク戦争開始のあとに本書は書かれている)の「嫌われ者のアメリカ」に対し、書名のごとくその襟を正すように求めている。特に民主党=リベラル、共和党=孤立主義的な色合いを強めてきた時代をかなり憂いている。著者はご自身で「楽天家」と書くように本音はアメリカのリベラルを確信しているようだが、それが揺らいで戸惑っているのかもしれない。2022/06/28
kawa
30
タイトルからトランプ在任時あたりの政治状況の評論かと思ったのだが、案に相違して子・ブッシュ時代(2000年代前半)のそれだったことが意外。筆者は60年~80年アメリカに在住、アフロ・アメリカンやネイテイブ・アメリカンさらにはハワイ、フィリピンの先住民族の動向の研究者。前半部はアメリカを車で巡るロードムービー的展開が嬉しい。後半部は当時のアメリカの分析・課題・処方箋の提示。が、筆者の指摘と真逆の道を歩むが如き現在が残念。思わぬ拾いもの本だった。2023/01/06
あきあかね
28
ローマやモンゴル、スペイン、イギリスなど地球上では、様々な国が覇権を握っては没落する栄枯盛衰を繰り返してきた。本書が著された2000年代中頃は、まだ現在のようにアメリカに迫る中国の台頭は見られなかったが、その頃からアメリカには、膨大な軍事費による国内の疲弊、京都議定書からの離脱やイラク戦争への突入に対する批判など既に衰退の兆しが見られていた。 本書では、ブッシュ政権のユニラテラリズム(単独行動主義)への厳しい評価が下されているが、今は亡き著者が現在のトランプ政権の様を見たら、⇒2020/08/15
sabosashi
9
わたしにとっては米国史の碩学ではあるが、じつはそれほど主流を歩んできたわけではない学究者による米国史の一段面とそのライフ・ストーリー。八十七歳と長寿をまっとうしたが、亡くなる五年前に著したもの。 たとえばこのひとは黒人史をライフワークとする。黒人史なんて、かつてはきわめてマージナルなテーマであり、昔、安岡章太郎が米国の黒人社会のなかに留まったときは、読み物としても興趣がつきないものであった。 つまりこのひとは、つねにマイナーな視点をわすれずに米国を眺めてきて、そこから過去・現在の米国を総括する。2019/08/10
マッピー
7
アメリカが愛されていた頃。強くて明るくて開かれていてフェアで自由の国、アメリカ。ちょっと前まで戦っていた相手国だというのに、日本人はあっという間にアメリカが好きになった。アメリカが嫌われるようになって久しい。少し古い本なので、ブッシュ(息子)政権2期目の頃のこと。しかし、未だにアメリカは一国主義だし、強権的で、ますます嫌われているように見える。“アメリカは世界の警察官、裁判官であるにしては、世界の事情に無知である。”2018/08/08