出版社内容情報
解雇ルールの新設を含む改正労働基準法が今年6月成立した.有期雇用と裁量労働の拡大もさらに進む.規制緩和推進の流れのなかで,日本企業社会や働く環境はどう変わるのか.解雇の実態,労働裁判の現状,法改正の舞台裏などへの緻密な取材を通して,次世代に手渡すべき「公正なルール」とはなにかを問いかける渾身のルポ.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
35
不当解雇の実態に絶句した。従業員の「悪事」を捏造してまで会社を辞めさせようとするなんて、モラル以前の問題ではないか。非正規雇用の問題も絡み、建前と本音がさらけ出される。司法側の認識不足、さらに国の構造上の課題ということもある。憤りを感じた。2015/04/16
壱萬弐仟縁
9
10年前の本。小泉改革に加え、今後はTPPで外国人労働者との仁義なき戦い。最悪時給5百円か? 2百の方が8百より生産性が高いなら、「妥協」点で間を採る。独では不当解雇で司法判断仰げる(19頁)。何を「不当」とするか。抽象的な例(42頁)。強引に経営(開き直り・逃げ・嘘・しらばっくれ)する企業ほど、強引にクビ強要。裁判も警察も誰の味方か知れない。弁護士も弱者救済をお願いしたい。カネづるでは困る。日本に労働裁判所はない(106頁)。経済大国なら作ってよ。労基法や労組法も時代に合わない。改憲いう人はどう構想か。2013/08/05
Nobu A
8
図書館本読了。2003年に成立した改正労働基準法。立証責任が使用者側か労働者側かにあるかで裁判の行方がこうも違うのかと思った。会社相手に裁判を行うのが何故不利か、そして、それでも行う労働者の切実な思いが綴られ、胸が締め付けられる。後半に出てくる日本を代表する某企業オーナーのインタビュー内容には辟易。勿論、企業側の優先事項はあるだろう。しかし、労働力は決して商品ではない。「一部の貧困は、全体の繁栄に危険である」という言葉が心に深く突き刺さる。まずは、ドイツ等の労働の思想に学び、法の整備が必要。一歩でも。2018/01/18
す○○
4
「いま作られようとしているものは『身分によって生きる権利が変わる』社会であり、『職業には貴賤がある』という思想を公然と語る差別社会である」著者に同感である。一方、宮内義彦は「日本は戦後、企業が頑張ったからここまで豊かになり、企業を殺すことをしてはいけない」と言うが、頑張ったのは労働者だということすら理解してない蒙昧が日本を代表する企業経営者とは嘆かわしい。さきの参院選では雇用が話題になり良い兆しと感じているが、投資家より労働者が主役の社会になってもらいたい。2013/07/31
アルゴン
3
★★★★ 今の労働法はこのころと変わらず立証責任がありますが、かつてはこんな議論もあったんだなあ。正社員が今ほど守られている必要もないとは個人的には思わないでもないですが、本書のようなでっちあげ解雇を防ぐためにはやはり立証責任は使用者側にあるべきだなあ。2015/03/03