出版社内容情報
同時多発テロとアフガン戦争を経て,アメリカが「帝国」として世界を動かしていく秩序が現われてきた.なぜアメリカは帝国になったのか.同盟諸国や第三世界はどうなるのか.気鋭の国際政治学者が,現代の世界政治を徹底分析.
内容説明
二〇〇一年の同時多発テロ事件とアフガン戦争を経て、新しい世界秩序が姿を現してきた。それは、アメリカが「帝国」として世界を動かすというものだ。なぜアメリカは帝国に向かったのか。アメリカの変貌の下で、アジアやヨーロッパ、第三世界はどうなるのか。帝国秩序を超える道はどこにあるのか。世界政治の現在を徹底分析する。
目次
序 ボスのいる世界
第1章 帝国としてのアメリカ
第2章 自由の戦士
第3章 闇の奥
第4章 正義の戦争
第5章 帝国と地域の間
終章 帝国からの選択
著者等紹介
藤原帰一[フジワラキイチ]
1956年東京生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得中退。現在、東京大学大学院法学政治学研究科教授。専攻は国際政治
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kei
14
世界はアメリカという現代世界の構図から、その問題点と他国間関係がどうあるべきかを説く。自分の勉強不足を知るのに良い本であり、アメリカがどうあるべきなのか、どう進むべきなのかをもっと勉強したくなる一冊。映画の場面の解説も多く、なるほどそんな視点で映画を観たことがなかったなと思わせられた。2016/07/18
あんころもち
10
自由の象徴でありながら現代の「帝国」として語られることの多いアメリカ。自由から帝国へと変質させる思想の展開に注目して国際政治学上の「帝国」概念を用いながらアメリカを考察する一冊。民族による紐帯に乏しいアメリカは自由や人権といった思想にその紐帯を求めたが、それは一国に収まるものではないとする説明は示唆的である。本書でなされる指摘は非常に概念的で、また史料や資料の引用は少ない。むしろ、教授の愛する映画と結びつけながら解説する場面が一番筆がのっているあたり、軽い読み物と言える。2016/03/14
ceskepivo
4
10年前にかかれた本。著者は「アメリカが帝国に向かい、単独行動に頼るとき、他の諸国はアメリカとの距離を広げ、それぞれの地域における制度形成に関心を映してしまうだろう」と警鐘。しかし、10年後の今はどうだろう。オバマ政権は、シリア問題では何もできず、クリミア問題ではロシアにやられている。中国も米国と対等の関係を結ぼうとしている。アメリカの相対的な国力低下が秩序の混乱を招かなければよいが。2014/04/12
おらひらお
3
2002年初版。この本もタイトル買い。タイトル買いは失敗の傾向がありましたが、本書は成功の一冊。まず、帝国を分類し、現代アメリカを新しい帝国として位置づけています。この帝国は単独行動主義など問題点が多く、ヨーロッパや東アジアなど地域によって受ける影響も異なることを指摘しています。帝国の解消には国際協調が必要との指摘ですが、現在、イラクからの撤退などアメリカの単独行動主義も行き詰まりを見せているような気もします。2011/12/18
Moloko
1
これは2000年代前半までのアメリカの、中から見た外交的な認識を主に扱った本である。外から見たアメリカの見え方というのも叙述されているが、この本の中心的な価値はアメリカが世界をどう認識して、どう行動しようとしたのかを描いた所だと思う。擁護すれば、2015年現在では中国の大国化というのが日本の外交的関心の中心であって、時評としてのこの本は求める人は少ないだろう。ただ、アメリカがどのような価値観で外交してきたかは抑えており、デモクラシーの普遍性を信ずるアメリカの信念を纏めて考察している点が有意義だと思う。2015/11/03