出版社内容情報
心身を蝕む病苦を抱えながら,チッソ・行政と闘いつづけてきた水俣病患者.彼・彼女らはどう生き,われわれに何を問いかけてきたのか.事件の風化が危惧されている現在,10名の患者がみずからの体験や思いを語る証言集.
内容説明
親しき者たちの壮絶な死、突き刺さるような差別と偏見、チッソ・行政との長き闘い、そして和解案受諾の選択…。心身を蝕む病苦を抱えながら、水俣病患者たちは、どのように生き、何を訴えてきたのか。事件の風化が危惧されている今、10名の患者がみずからの体験や思いを語り、時代の感受性を問う証言集。
目次
序章 死者と未生の者のほとりから―水俣病者が語るということ
第1章 悲劇のはじまり
第2章 隠された被害
第3章 みずから立ち上がる
第4章 水俣病とともに
第5章 現代を問う
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
103
先般読んだユージン・スミスについての本で水俣病患者のことがきになったの読んでみた。2000年刊行。自身が水俣病に侵されたり家族が罹患したりした患者10名による証言集。チッソが漁港に流し続けた有機水銀で体、神経を侵され最悪の場合非業の死、何度も流産する女性、患者に対するひどい中傷や差別、また被害者の会に対する分断や座り込み阻止のための暴力などが方言で語られるのが余計に悲しくなった。同じような公害が開発中の中国やロシアでも起こっていると聞く。同様の悲しみを持つ人々が声が届かずにどこかで泣いているのだ。2021/11/07
nbhd
23
簡単に涙を流してカタルシスがあれば良いものではないと思って読みつつも、なすすべなく眼が滲む。1996年の水俣病講演会の記録。中でも杉本栄子さんと緒方正人さんの言葉には「どうして人はここまで進化できるのか」と、人間のちょっと不思議なくらいの凄味を感じた。(緒方正人さん)「唐突ないい方のようですけれども、私は、チッソというのは、もう一人の自分ではなかったかと思っています。/水俣病事件に限定すればチッソという会社に責任がありますけれども、時代の中ではすでに私たちも『もう一人のチッソ』なのです。」2016/10/22
寝落ち6段
15
先日、新たに水俣病訴訟で認定が出た。発生から70年近く経つというのに、今でも苦しんでいる人が多くいるという事実。国やチッソに重大な過失があったというのに、被害者を置き去りにしてきたという事実。経済の発展を謳い、工業が隆盛を奮うのはよいとして、公害により多く人生が奪われた。経済は作れば、売れればよいのではない。人間がいなければ経済は発展しない。だから、我々は学ばなければならない。証言を残すことは、途轍もないほど重要なこと。本人の言葉ほど、重いものはないのだと思う。2023/11/21
かりん
3
以前美術館で一気読みしたもの。 すぐ読めて、グサッとくる。2024/02/01
tu-ta
2
ずっと前に読んだことを http://www.arsvi.com/2000/0008tm.htm で思い出したので、忘れないようにメモ