岩波新書 心病める人たち―開かれた精神医療へ

石川 信義【著】

岩波書店（1990/05発売）

• サイズ 新書判／ページ数 248p／高さ 18X11cm
• 商品コード 9784004301226
• NDC分類 493.7
• Cコード C0247

出版社内容情報

日本は精神病者に冷たい国である．治療より治安を優先し，患者を病院に閉じこめることばかりに熱心だ．宇都宮病院の悲劇もそこから生まれた．いち早く完全開放病棟を実現した病院長が，自らの実践の跡を振り返りながら，精神病院の縮小・廃止にむかう欧米の動向を紹介し，日本の精神医療の矛盾と進むべき道を怒りと情熱をこめて語る．

内容説明

日本は精神病者に冷たい国である。治療より治安を優先し、患者を病院に閉じこめることばかりに熱心だ。宇都宮病院の悲劇もそこから生まれた。いち早く完全開放病棟を実現した病院長が、自らの実践の跡を振り返りながら、精神病院の縮小・廃止にむかう欧米の動向を紹介し、日本の精神医療の矛盾と進むべき道を怒りと情熱をこめて語る。

目次

序の章　かつて町に住んでいた彼ら
１　精神病院のなかで（ひどい精神病院；乱立する精神病院；精神病院の仕組み；腐敗した精神病院；開放への試み；揺れ動く精神医療界；精神病院医療の限界）
中の章　町から拒否される彼ら
２　「地域化」へむかって（病院廃絶にむかうイタリア；「地域化」にむかう欧米；精神病院の内なる壁；立ち上る家族；精神保険法と現況；精神病院の外なる壁）
終りの章　再び町に住んだ彼ら

著者等紹介

石川信義［イシカワノブヨシ］
１９３０年、群馬県に生まれる。１９５３年、東京大学経済学部卒業。１９６２年、東京大学医学部卒業。１９６１年には第５次南極観測隊に、また１９６６年には東大山岳部カラコルム遠征隊に登攀隊長として参加。医学部卒業後、東大病院神経科、都立松沢病院を経て、１９６８年、群馬県太田市に三枚橋病院を創設。現在、医療法人赤城会三枚橋病院理事長兼院長
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[こばまり]

その怒りや嘆き、奮闘する姿は刊行から約30年を経ても依然熱いままだ。加えてライシャワー事件に宇都宮病院事件、イタリアのバザーリア改革、当時施行されて間もない精神保健法等、20世紀精神医療の教科書に記載される出来事が一臨床医の視点から生々しく語られ興味が尽きない。聞けば著者はRHYMESTER宇多丸氏のお父上の由。

2018/11/25

[優希]

この本の書かれた当初と現在は異なるでしょうが、ここに書かれている状況に衝撃を受けるしかありませんでした。治療より治安、病的な部分だけ見られてしまうこと、更には患者を無視していた時代があることはショックです。死に至らしめる暴行もあったとか。しかし、人間らしい生活ができるような環境を作れば変わるのです。今では状況も異なり病院から地域へと言われていますが、いかに受け入れられるかが問題ですね。まだ排除の意識はあるでしょう。意識を変え、精神医療を見直さなければ同じことは繰り返される。身につまされました。

2014/11/16

[mana]

1990年出版本。患者を縛り付けるルール、周囲の人間の偏見や差別、社会復帰の難しさ、精神医療のビジネス化と収容所化…。これらの深刻な現状を変えるため、改革を進めていった医師の著書。開放で自由な病棟にしたことで、患者も明るくなっていく。地域の人を説得し、社会復帰のための施設を作り、退院後のケアも行う。法律や制度がなかった時代に、石川氏がここまで行動したからこそ、今の形があるのだろうか。　しかし、現代でも未だ精神障害者への偏見は残っている。すべての人々が生きやすい社会になることを切に願う。

2021/06/07

[ステビア]

個人的には『ルポ・社会的入院』で読んだ話が多かったが、良著と思う。イタリア、カナダ、フランス、アメリカ、カナダの精神医療改革についても書かれている。

2017/02/25

[koheinet608]

30年以上前の本です。以下引用「従来の精神病棟で見られた数多くの制限や規則や禁止事項は、ほとんど廃止した。制限や規則などというものは、精神病院では作り出したらキリがない。それらをキリもなく作っておいて、守る方、守らせる方、双方で必死なるなんてつまらないことだ。だから私たちは、はじめ規則も禁止も作らないでおいて、どうしても必要となった事柄だけを患者たちと話し合って決めることにしようと思った」 以前の精神病棟を見て、思わず今の日本じゃないか？と思いました。今の日本社会は没交流の巨大な精神病棟になってしまった

2020/11/23