出版社内容情報
マルクスの死後に遺された『資本論』第二,三巻の膨大な草稿――盟友エンゲルスは,その解説と編さんに全精力を傾け,ついに刊行を実現した.その遺稿をめぐり,マルクスの娘たち,カウツキー,ベルンシュタインら多彩な人びとをまきこんで展開された,友情と恋と猜疑の交錯するドラマ.急逝した著者に代わり,親友・伊東光晴氏が終章を執筆.
内容説明
マルクスの死後に遺された「資本論」第2,3巻の膨大な草稿―盟友エンゲルスは、その解読と編さんに全精力を傾け、ついて刊行を実現した。その遺稿をめぐり、マルクスの娘たち、カウツキー、ベルンシュタインらをまきこんで展開された、友情と恋と猜疑の交錯をするドラマ。
目次
序章―「資本論」の草稿を求めて
死・遺産―マルクスの最後の指示
蔵書・資本論―エンゲルスの見通しは甘かったが
英語版・相談役―第3巻はなぜ遅れたか
サロン・離婚―深夜まで、飲んで歌って
象形文字・誕生日―筋書きさえもなくて
ラブレター・ルイーゼ―エンゲルスの「変わらぬ愛」
遺言書・タッシー―遺稿は誰の手に?
クリスマス・死―錯綜する不信と猜疑
終章―「物語」その後(伊東光晴)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
94
マルクスの資本論の遺稿についての彼の後継者のエンゲルスやマルクスの家族の話などのエピソードについてまとめたものです。岩波の雑誌「図書」に連載されていたものです。佐藤金三郎先生の未完の絶筆となってしまったのを大学時代からの友人の伊東光晴先生が終章を追加して完成させたものです。マルクスというと堅苦しく思われがちですが、このような軽い読み物があってもいいですね。2016/01/08
新地学@児童書病発動中
89
マルクスは『資本論』を完成させて死んだのではなかった。二巻以降は友人のエンゲルスの尽力により完成した。マルクスの遺稿をめぐる歴史の動きをコンパクトにまとめた新書。エンゲルスの無私の働きに心を打たれた。読みにくいマルクスの原稿の解読に力を入れ、それを活字に起こす作業を続けて『資本論』を完成させた。エンゲルスはコスモポリタンであり、数か国語に堪能で、ヨーロッパの共産主義者たちと活発に交流していた。共産主義には興味は持てない。それでも、この社会の矛盾に切り込んでいったマルクスとエンゲルスの偉大さを実感した。2018/04/14
たいけい
19
2021年9月5日(日)読了。マルクスの遺稿がどのような運命をたどったのか記述されている。資本論はマルクスが1巻を発行後死去。親友エンゲルスが志を引き継ぎ2・3巻を発行。その間にどのようなことがあったかが知られ興味深い。エンゲルスがいなければ資本論の完成はなかった。2・3巻はむしろマルクスとエンゲルスの合作と言う方が近いかもしれない。マルクスの娘たちが遺稿・遺産の配分をめぐり別れ、各々悲しい末期を迎えるのは痛ましさを覚えた。一方、遺稿がヒトラーの手を逃れて今日伝わっていることはまさに奇跡と言えると思った。2021/09/05
壱萬弐仟縁
9
バブル期の頃の本。そのことだけで、十二分に意味がある。そして、本書を今読む意味もあると思う。伊藤光晴先生が、著者が志半ばで逝ってしまった旨、冒頭で説明される。そんな悲劇も学者にはあるのだな、と思った。マルクスは大英博物館の図書館に足繁く通ったようだ(45頁)。どんなに素晴らしいのだろうか。一度行くチャンスはないだろうな。400冊蔵書があったとのこと(48頁)。2013/08/09
それん君
7
マルクスの本の読みはヒトラーと大変よく似ていることに気づいた。エンゲルスのアダ名が将軍だったのも面白いし語学の天才だったことは初めて知った。こうゆう偉人の人間的な部分って結構好きだなぁ。2017/02/22