出版社内容情報
いまでは仏教のあるところ,どこでも仏像崇拝が見られるが,釈尊の時代から数世紀のあいだ仏像が作られた形跡はない.いつ,どこで,どのようにして仏像が作られ,崇拝されるようになったのだろうか.ガンダーラ,マトゥラー両美術の検討をとおして仏像誕生の過程をさぐり,仏像の出現が美術史上,仏教史上にもつ意味を明らかにする.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
umeko
12
タイトル通り、「ガンダーラかマトゥラーか」を論じている。いちいち納得しながら読ませられてしまったが、次は違う立場から論じたものを読んでみたい。薄っぺらい知識しか持ち合わせていない私には、ゾクゾクするほど魅力的な内容だった。2016/05/01
壱萬弐仟縁
9
外国人観光客にどう説明したらよいか。現代日本人は多忙で、ゆとりをその表情に見受けられない。ゴダイゴのガンダーラのメロディを想起するガンダーラ遺跡(48頁地図)によると、ペシャワールやイスラマバードといった地名も見える。中村哲医師のペシャワール会をも思う。西からギリシア系美術やローマ美術の影響を受けた西方仏教美術(50頁)とのこと。素朴な疑問として、動いているものを静止したままであっても形そのものを残す意味とは何か? 後世への影響を考えてか。現世での自己満足なのか。穏やかに過ごせる人生を代理に叶える仏像か。2013/12/01
よー介
1
仏教美術のなかの、仏像の起源について焦点を合わせた本。普段、仏像に手を合わせたりしているが、仏陀が存命中や死んでからもしばらくは、偶像崇拝が禁じられていたこともあって、仏像というものは作られなかった。しかし1世紀半ばくらいからガンダーラ(パキスタン・アフガニスタン)とマトゥラー(インド)で同時に仏像が作られるようになったとのこと。最初は仏教の布教のために仏伝図があり、そこから仏陀象が単独で作られるようになったようです。2017/09/03
Takashi
1
徐々に徐々に読み進めて、半年がかりで読了。仏像不表現からの転換という画期を、物証不十分ながらガンダーラ仏の影響に求め、マトゥラー仏が成立したと考察。西方美術の影響を色濃く受けたガンダーラ仏、こちらがマトゥラー仏に先行するという前提。こうした仏像誕生の歴史が、力まない筆致で描かれる。それにしても、仏像不表現ゆえに初期の仏像が「菩薩」とされているとは驚いた。タブーに挑むときには、いつでもこうした「方便」が必要なのかもしれない。2016/05/02
OKKO (o▽n)v 終活中
1
図書館 ◆「仏像の起源」レポート指定参考図書。家にあった気がするが借りたほうが早いし(笑) ◆「ガンダーラかマトゥラーか」という約一世紀に渡る熱い論争の内の一冊。本書は「ガンダーラの仏像表現解禁情報を得て、マトゥラーが追随」というワタクシ好みのナイス見解をずばり断言 ◆前半の研究史紹介もわかりやすくて、このたび数日間でこのテの本を10冊ぐらい読んだが、最後に読んだこれが一番すっきりさっぱりしておりました。仏像起源研究においては当然他の資料と併読しないといけないんだが、興味ある方は必ずチェックされたし2013/11/25