出版社内容情報
遠くエジプトやトルコ,あるいは中近東,更に東南アジア各地の廃墟を探り,中国から輸出された宋の青磁や白磁,元・明の染付などの行方をたずねて中世期東西文明交流の道程を明らかにする.シルク・ロードと並ぶこの陶磁の道をたどりつつ,辺境に営まれた人びとの生活や文化にも目を注ぎ,陶片を通して世界史の一断面を語るユニークな書.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
れうしあ
1
エジプトのフスタート遺跡から中国陶磁片が大量に出土する。ここから富の蓄積や中国愛が分かる。エジプトばかりではない。東アフリカやアラビア半島でも同様であるし、トプカプサライには多数の中国陶磁が収められている。メソポタミア、ペルシア、アフガン、パキスタン、インド、セイロン、東南アジアに至るまであらゆる土地から見つかるのである。陶磁は朽ちることなく考古学上の資料となりうる。そしてこれは貿易の様子や影響を今に伝える。これらを運んだのは主に海上交通であり、東西文明を繋ぐこの道を、著者は陶磁の道と呼ぶ。2020/04/08
ていと
0
とても興味深い内容だった。新書に似合わず詩的な表現などもあり、まるで小説を読んでいるような臨場感があった。中国の陶磁器が辿った交易の道に思いを馳せると、当時の人々の暮らしがリアルに蘇ってくる。ただ、作中でも既に顔が削られていたバーミヤン遺跡が、今は爆破されて跡形もないというのが、なんとも物悲しい。2015/08/31
Wakako Kumakura
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これを読むと、材木座〜由比ケ浜へ、陶器の破片集めに出かけたくなります。陶磁好きはもちろん、世界史、国際交流、発掘などに関心がある人におすすめ。心地よい文章で、知識がなくても楽しく読めます。2013/08/16
シンドバッド
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大変面白く読みました。 正に陶磁の道2012/07/14
まんげきょう
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「中東の荒れ果てた町あとや古窯跡のあちこちに、かれらはひっそりと小さい姿を横たえているが、飾り気のなもない可憐なそのたたずまいに、思わず手をさしのべ、拾い上げてしまう。(中略)破片のなかにかくされていた歴史が身軽におどりだす。」陶片のように見向きもされない物への愛情と思いが随所にみられる本です。 海のシルクロードとも言うべき「陶磁の道」から陶磁器やオリエントへの興味が広がります。2019/06/11