出版社内容情報
イギリスの文豪モームが世界文学から『赤と黒』,『デイヴィッド・コパーフィールド』,『ボヴァリー夫人』,『嵐が丘』や『カラマーゾフの兄弟』など小説十篇を選び,作家と作品を論じる.作家の日常生活や人間関係,個性や人間的矛盾を述べながら作品が生みだされる過程をいきいきと描き,小説を読む楽しさのなかへ読者を導く.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
4
フローベールは人生の目的を生きることにではなく、書くことにあった(2頁)。人生とは書くこと、書きまくることか。凡人には勇気がない。メルヴィルも漱石のように神経衰弱の状況で『ピエール』を書いたという(83頁)。これが嵩じると自殺となろうか。偉大な文学作品の代償が作家の自殺とは社会的に何とかすべき教訓に思えるが。小説家とは、人生を自分の目的に合うように適当に組み立て直し、与えられた材料を、独自の体質によって処理する(103頁)。129頁で家庭教師として住み込むとは、家政婦のようだったわけだ。今ではあり得ない。2013/03/13
ELW
0
『ボヴァリー夫人』のフローベルが工夫を凝らした文体が今となってはお寒いとか、『白鯨』でメルヴィルが人物たちに年齢や立場に関係なく同じような話し方をさせてしまっているなんて、翻訳で読んだ身としてはちっともわからない。 しかし、文豪の皆さんインターネットがなくてよかったね。2023/12/31