出版社内容情報
遠くもない過去に,身ぐるみ戦争に「まき込まれ」てあらゆるものを失った経験をもつ日本人にとって,大事なことは,まき込まれながらまき返す手だてを考えることだ.居丈高な演説口調にはそっぽを向いても,世の中どこかまちがっていると感じている普通の人間の立場から,その人々のために書かれた本.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nick
8
小田実流政治学。えらいたいそうなこと言うてはりますなぁ。それで、わたしはどないなりますねん。そして、あんたはどないしはりますねん。 日々のくらしのなかで、まかれながらまかれないでいる。そして、まかれながら巻き返すということを具体的に行って行く。2021/03/01
hart
1
世の中に対し批判精神をもつ普通の人が、国家のしくみの中で巻き込まれながら巻き返す為に、いかに行動すべきかという、小田実の「市民の政治学」。ごく近い過去に、戦争に巻き込まれてあらゆるものを失った経験をもつ日本人にとって、極めてだいじな思考と説く。個人主義に立脚する市民運動の難しさ、「べ平連」活動への矜持を強調する。小田実は1960年安保闘争の時期から、平和運動を開始。その後、「ベ平連」を結成。しかし、ソ連邦の崩壊により、小田がKGBから資金援助を受けていたソ連側機密文書が公開され、評価が大きく下がる。2022/04/30
Mt. G
0
後輩のYくんが古本屋で手にしていたのをみて、私も本棚の奥からひっぱりだしてきました。う~ん、言ってることはもっともなんだけれども……。ある局面においてはそれを乗りこえて、えいっと決断しなければならない場面は必ずでてくる。いきなりこの本を手にとって、前提となる理論や経ておくべき分析をハナから吹っ飛ばした、いきなり反省から入る読書体験を経験してしまうと取り返しのつかないことになりそう。読んでいるとなんだか“ケンカを売られている”ような気持ちになりました。ある意味、「アブナイ本」ですよ、これは。2015/06/03
bittersweet symphony
0
初版1972年、過労で倒れ入院した地方都市の病院のベッドで書かれた小田実当時40歳の作品が復刊されました。執筆状況が状況のためか徹底した個人主義に立脚した市民運動についての話が思いつくまま延々と続きます。上巻は個人に立脚して組織を語る困難に対する呪詛的な要素が強く、下巻は上巻で比較的抑えられていたべ平連を代表とする自らの活動に対する矜持と相対するものへの怒りが表面化していきます。2007/10/26