岩波新書<br> 現代日本の思想 - その五つの渦

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岩波新書
現代日本の思想 - その五つの渦

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  • サイズ 新書判/ページ数 229p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784004120414
  • NDC分類 121.6
  • Cコード C0210

出版社内容情報

恐慌,侵略戦争,そして敗戦.この苦悩にあえぐ現代日本の現実を,何らかの形でゆり動かしたものは何か.その代表として,白樺派,日本共産党,生活綴り方運動,北一輝らの昭和維新の運動,戦後世代の五つをあげ,そこに体現された諸思想――観念論,唯物論,プラグマティズム,超国家主義,実存主義――の性格と役割を明らかにする.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

きいち

19
文学、政党、教育…と、書かれたものではなく、行動そのものから活きた思想を読みとろうという試み。この「現代」とは1955年、なのに、どれも新しい。◇特に凄かったのは大正から戦後にかけての綴り方教育運動を「日本のプラグマティズム」として読み解いた章。この運動、創始者の芦田恵之助のほうは国家主義的、その後の生活綴り方運動のほうは左翼系。でも理念ではなく、担い手の生き方や実践そのものに注目し一つの思想として像を結ばせる鶴見の目はまさに右翼左翼を超えたもの、ギデンズやん。これが戦後すぐの思考というのだから恐れ入る。2013/11/28

nobody

10
久野収による「日本の超国家主義」が白眉。まるで『1984年』に出てくるゴールドスタインの「例の本」。明治以来の国家主義は建前として天皇の絶対神聖性を国民に洗脳する“顕教”と支配層間の申しあわせとして大学及び高等文官試験に至って初めて明かされる実は立憲君主・国政の最高機関だという“密教”の二本立てだった。北一輝は密教による顕教征伐を目標に昭和の超国家主義を企てたが二・二六で完全屈服。北曰く、天皇は国民と等しい国家の一分子たる国家の機関である、「今日吾人は国家の擁護者たる名において科学の利刃をとるべきのみ」。2018/07/23

Michael S.

9
1956年刊。古い本だが面白かった。日本の現代思想として白樺派(観念論)日本共産党(唯物論)生活綴り方運動(プラグマティズム)超国家主義(昭和維新)実存主義(現代の思想)の五つ。特に生活綴り方運動の章が興味を引いた。三浦綾子の『銃口』で北海道綴方連盟事件が描かれていたことを思い出した。戦前は作文教育が治安維持法で弾圧されたのだが、現代でも小中学校の作文教育はわざと粗略に扱われていると思う。民衆が文章を書いて自己の社会的立場をはっきりと言葉で自覚することは、いつの世も支配者にとって都合が悪いのだ。 2019/03/23

モリータ

9
白樺派・日本共産党・生活綴り方運動・超国家主義・戦後の実存主義というテーマの設定がおもしろい。一番興味があるのは生活綴り方の話で、力強い現象として記述されている。恐らく最も具体的に「現代」にも通じる問題意識だと思う。日本共産党の検証可能性の弱さ、というのは浅羽著で言及のあった内容ですね。2016/03/08

mittsko

8
まさに表題のことについて頭を整理したくて、手にとった。とても勉強になった。1956年初版、占領支配が終わってわずか4年後の力づよい思索。我々はいま、新たな問題を課せられているとともに、驚くほど相同な課題も抱えていることがよくわかる。なお、日本共産党の思想を軸にした理解記述が、現代日本の多くの読者には不可解にも不快にも感じられるだろうが、私の知るかぎり、これこそが順当な近代日本思想史の書き方のはずだ。そこに上手くチューニングできなければ、今日の思想的課題はまったくクリアできないだろう、と確信する。2017/01/06

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