出版社内容情報
「われ考う,ゆえにわれあり」という言葉で知られるデカルトは,はじめて科学的に世界全体をみた人であり,その世界をみる主体である「われ」とは何であるかということに明快な答を与えようとした近世合理主義哲学の開祖である.この偉大な哲学者の生涯をたどり,代表的な著作を解説しながら,その人と思想の全貌を紹介する.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コウメ
62
デカルトの生涯や思想などが書かれた1冊。本名はルネ・デカルト、フランスの思想家、1596年生まれ1650年に亡くなる。日本では豊臣秀吉晩年から徳川家光晩年の時代の人。〈デカルトの思想の重要な点2つ〉第❶は、デカルトがはじめて世界を全体として科学的に見るのとをあえてした人である点。第❷は、世界において「われ」がいかなる生き方を選ぶかについて単純かつ徹底した方針をたてた点。2019/12/12
おおた
16
哲学書は本書のような優れたガイド(講演の内容なので読みやすい)とともに読まなければいけない。昨年読んだ『方法序説』は、「うむ、そうだな」というくらいの、考え方は21世紀では当然だけど実践は難しいよな、くらいの印象だった。本書はデカルトの生涯を見つめながら、どの時点でどのような考え方が生まれたかを追いかけていく。第三の格率「つねに運命によりも自己にうちかつことにつとめ、世界の秩序よりはむしろ自分の欲望を変えようとつとめること」は今でも真理だ。2019/07/20
mstr_kk
15
じつは全体をあるテーマが貫いていて、最後まで読んでから最初に戻ると、「そういうことだったのか!」と感動しました。そのテーマとは、「知的客観性(理論)」と「意志的主体性(実践)」のふたつの軸です。これはデカルトが意識の能動的様態の2本の柱としたものだとのこと。著者の野田又夫は、デカルトの生涯と思想のあらゆる局面に、このふたつを見出していきます。本文180ページほどのコンパクトな本で、ですます体の一見やさしげな文章で書かれていますが、密度は異常に高い。読むのに意外に苦労しましたが、得るところは大きかったです。2019/02/16
さえきかずひこ
14
近代科学の礎を築いたデカルトの入門書。前半でさらりとその生涯が眺められ、後半は『方法序説』を中心にその哲学の要点が平易に解説される。しかしそんな本書の中でも、ぼくは彼の神の存在証明にいちばん惹かれた。それはもちろん自分の資質というかもはや体質的なものなのだろうが、16世紀末〜17世紀前半の思想がまだキリスト教のくびきから脱しえないしるしとして現れていることを感じ、そこにロマンを見出すからなのだろう。単純に「デカルトなんて単なる二元論で、動物機械論を唱えた人だろ」と見なしている人にぜひ手にとってもらいたい。2018/07/08
壱萬弐仟縁
14
発見の方法は、分析の方法である(66頁)。彼は、動物を自動機械と見做した(154頁)。内的感情を、彼は高邁の心(けだかさ)と言った(172頁)。驚きと自尊でもあるという(173頁)。悟ることの大事さか。名誉や富や健康もだが、それらよりも、知恵とか徳の善が大事だということらしい(173頁)。われ思う、ゆえに、われあり。自分の存在ってなんなのか。思春期のみならず、被爆におびえることは放射能汚染の世の中でいつも思わざるを得ないこと。考える存在が人間だが、パスカルの考える葦でもある。人間は自動化されにくい存在か。2013/08/16