出版社内容情報
ロシア革命とユダヤ人，イスラエル建国，といった政治問題を論じ，スピノザ，ハイネ，マルクス，フロイトら，ユダヤ人でありながらユダヤ人を超えて普遍的人間を志向する「非ユダヤ的ユダヤ人」の姿勢についても語りかける．現代のユダヤ人問題に多角的な光を照射する本書は夫人によるドイッチャー伝も含む．
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
9
1970年刊行の岩波新書。ドイッチャー(1907-1967)は普遍的な人間として非ユダヤ的ユダヤ人を志向するインターナショナリストのユダヤ人である。ロシア革命とユダヤ人、西欧と東欧のユダヤ人、そしてイスラエル建国の歴史をとおして、彼は世界がユダヤ人をその安定のために一つの民族国家に追い込んだこと自体を新しいユダヤ人の悲劇だとみる。民族国家はいつか崩壊し、崩れ去る運命にあるというのが彼の主張するところ。 「ユダヤ人が離散し国をなくしてしまったにもかかわらず2013/03/17
暗頭明
6
「アウシュヴィッツの祈りも、不条理な論理を押し通すため脅迫の手段に利用されてはならない。私はすぐの肉親をアウシュヴィッツで失った。私の親類はイスラエルに住んでいる。このような身内をもつ一人のユダヤ系マルクス主義者として私は語っているのである」p.189。 主観・伝聞であれ事実についての記述は興味深く読んだ：襲撃（ポグロム）の話など（対して、いかにも「政治パンフレット」（檄文というのだろうか）といったものは、幼少時より地域を代表するほどの秀才がものしたものでもそうなのかと多少距離を感じることもあった）。2017/10/27
海野藻屑
3
固定観念に囚われると痛い目にあうんですかね。2017/11/29
ねてた
2
ハイネ、マルクス、トロツキー、フロイト、アインシュタイン……など、優れたユダヤ人がなぜ多いのか、という長年の疑問を解決させてくれた良著。マルクス・トロツキーが説く国境なき連帯(インターナショナリズム)も、フロイトの説く全人類に共通する無意識の根底も、非ユダヤ人(この本で言うところのユダヤ的元ユダヤ人)の特徴である合理的、普遍的、非排他的な思想から来るものであり、全てはスピノザの哲学から演繹されたという筆者の説は目からウロコ。30円だとは思えない。2012/12/18
