出版社内容情報
一九二九年の大恐慌いらい,資本主義世界の経済運動は,ケインズをぬきにしては理解できなくなった.「新しい経済学」あるいは「ケインズ革命」とよばれるケインズの思想と理論が,イギリス社会の現実のなかから,いかにして生み出され,それが,従来の経済学の体系を,そして資本主義の現実をどのように変えていったかを明らかにする.
内容説明
一九二九年の大恐慌いらい、資本主義世界の経済運動は、ケインズをぬきにしては理解できなくなった。「新しい経済学」あるいは「ケインズ革命」とよばれるケインズの思想と理論が、イギリス社会の現実のなかから、いかにして生み出され、それが、従来の経済学の体系を、そして資本主義の現実をどのように変えていったかを明らかにする。
目次
1 三つの階級・三つの政党―ケインズの階級観(チャーチルとケインズ;一九二〇年代の経済問題 ほか)
2 知性主義―若き日のケインズの思想(マーシャルとケインズ;ソサエティーとその思想―ベンタム主義への批判と叡知主義 ほか)
3 新しい経済学の誕生(新しい現実、古い理論;『一般理論』の骨ぐみ)
4 現代資本主義とケインズ経済学(投資決定論の修正;ケインズの見なかったもの ほか)
ケインズ経済学をより深く学ぶために(投資と貯蓄との関係;『一般理論』の解説書 ほか)
著者等紹介
伊東光晴[イトウミツハル]
1927年、東京に生まれる。1951年、東京商科大学卒業。専攻、理論経済学。現在、京都大学名誉教授
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感想・レビュー
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KAZOO
113
この岩波新書の「ケインズ」は日本で本格的に一般向けに書かれたケインズ理論紹介の本だと思います。それまでは彼自体の訳書はあったようですが、これでかなり知られるようになったという気はします。私も学生時代に一般李厘自体はかなり難しかったのでこの本でまず理解をしてからということで非常に役に立ちました。いま読み返してみるとやはり基本的な考え方(有効需要の原理)は古くなく今も適用できるところはあると思われます。2016/02/13
ビイーン
31
経済学を知らない自分でさえも最後まで読了できる程、ケインズ経済学をわかりやすく解説してくれる良書である。2023/01/29
ふみすむ
22
ケインズの入門書には、彼の多方面での活躍と特徴的な人間性にも関わらず『一般理論』の解説に徹したものがほとんどだということで、本書は彼の主著『一般理論』の解説を第3章に限定し、ケインズその人の階級観、政治批判を含めた思想や、当時のイギリスを中心とする歴史的背景を紹介しながら、最後にケインズ理論と現代資本主義との関係を問題にしている。とはいえ、本書の初版はすでに50年以上前の1962年であり、(幸運にも)70年代の反ケインズ革命が起こる前の刊行である点には留意しなければならない。2016/05/21
masawo
14
岩波新書青版の割には比較的読みやすい。理解の度合いはさておき、経済ど素人の自分でも最後まで興味深く読むことができた。とはいえ数式も容赦なく出てくるので適度に読み飛ばしたが、なぜ「一般」理論なのか、という部分は理解できた気がする。ケインズの革新性と毒舌っぷりがビシビシ伝わる名著。2021/05/24
isao_key
11
『一般理論』を読む前の手ほどきとして読む。本書「ケインズ経済学をより深く学ぶために」で、「『一般理論』は、これから経済学を学ぼうとする人たちを対象に書かれたテキストではなく、第一線で活躍している経済学者たちに論争をいどんだ書物」とあり、かなり手強そうだ。本書はケインズ経済学の考え方がポイントを押さえてうまく説明してある。公共事業を増やすことで、雇用や収入を拡大する考え方はよく知られているが、一面軍事費の増大にもつながり、維持するための仮想敵が必要となったという記述は、現在まで当てはまる大きな問題である。2013/04/29