出版社内容情報
『資本論』を実際に適用してみることで,人間と社会がどう見えてくるか.『資本論』という経済学の体系を作ったマルクスが,現代の私たちに何を語りかけているか.対象である資本主義の現実と,マルクスという人物との間に緊張をたたえて成立する資本論の世界を解明し,現代を理解する視座を提供する.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
107
「資本論の世界」という代目の通り、資本論についての解説ではなく、資本論が生まれてきた背景などを論じておられます。内田先生のは比較的講演記録などが多く、これもN.H.K.で話された内容ですので話し言葉で分かりやすい感じです。わたしは出版された当時学生でこの本を早速読みましたが、資本論はまだ歯が立ちそうもなかったのでこの本で概要などを知った覚えがあります。2016/01/17
おたま
32
1966年に発行された本であるが、内容は決して古びてはいない。むしろ現在起こっていることをどう見ていけばよいのか、その視点を与えてくれる。著者自身は「経済学の書物である『資本論』をじっさいに使ってみて、その限りで人間と社会がどう見えてくるのか、それをためしてみたい」と述べているが、それは今でも十分有効だ。『資本論』第1部から「労働過程」「剰余価値の生産」「資本の蓄積過程」等に的を絞って、それらの持つ意味を非常に深く探っている。講義形式なので口調は易しいのだけれど、内容は濃密であり、読み深めることができる。2022/07/02
白義
11
マルクスの眼から追体験した現代社会と人間、資本論に至る社会科学の流れ。元はNHKの入門講座で分かりやすく、丁寧な語り口で資本論の体系を明らかにしていく。人間が自らの主権者として自由を増しながら、商品として社会の生産過程に隷属する資本制のパラドックスを具体的に描いている。特に、資本主義化の人間として、攻撃的な人間がより資本の論理に順応し優しき人間がそれに追いたてられるというのは妙に生々しいロジックである。新書のマルクス入門としてまだまだ古びない名著。アダム・スミスとの比較も面白い2012/07/19
qwel21
5
マルクス資本論を使ってみることで、資本主義の現実そのものがどう見えてくるかを考察する。やはりマルクス資本論は射程距離の長い論考なんだなと感じた。いつか取り組んでみねば。。。2010/03/16
♨️
4
「殆どの人にとって、いつのまにか仕事をしていない時間だけが「生きている」時間になってしまったのはなぜだろうか?」という問いをマルクスは経済学とドイツ哲学の間からということが語られていた。そうした感覚の人間を作り続けて維持するシステムのなかで、実は先に「生きている」と感じられているような時間すら自分を売り物に仕立てるために使うよう仕向けられていないかということが問題にされている。「再生産」と絡めて教育を扱うところでは教育者でもある著者の怒りを強く感じて泣きそうになった。2021/04/23