岩波文庫<br> 文化史上より見たる日本の数学

岩波文庫
文化史上より見たる日本の数学

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  • サイズ 文庫判/ページ数 341,/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003810040
  • NDC分類 410.2
  • Cコード C0141

出版社内容情報

日本と中国の数学を広く西欧に紹介した三上義夫(1875-1950)の論文集.その研究は,単なる和算の解説にとどまらず,社会状態,国民性,文化一般の発達と伝統数学との関係を見定めようとするものであった.

内容説明

中国と日本の伝統数学の歴史を英文で著述して、国際学界に名を馳せた世界的科学史家三上義夫(1875‐1950)。彼が日本の数学を文化史のなかに位置づけてみせたのが本書である。数学をも「芸」としてとらえてしまう日本的学問エートス。詳細な考証とともに新たに編纂されたこの著作は、日本の学問的伝統総体の見直しをせまる。

目次

文化史上より見たる日本の数学
和算の社会的・芸術的特性について
芸術と数学及び科学
付論 数学史の研究に就きて

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬弐仟縁

15
「数学科学を芸術として解することは、大正3年前後からの着想」(15頁)。昨夜の神の数式(NHK総合)もグラフィックスが印象的だった。元の朱世傑の『算学啓蒙』が朝鮮に伝わり、日本にも伝来(40頁)。算額は額面に算法の問題や解を書いて絵馬にあげる風(48-49頁)。色鮮やかに、扇子のような図式も見える。趣味としての和算(57頁)。趣味の国日本なのだ。数学者が詩人でもあるのだ(58頁)。曲線と詩のリズムは調和するとみてよいだろう。『塵劫記』で算盤図で本邦初の書(62頁)。関孝和『発微算法』1674年(70頁)。2013/09/23

4
本書を読んでも和算自体の知識は得られない。あくまで文化史として和算が趣味的芸術的に発展したということを主張する本。表題論文以外は内容も重複する部分が多い。注が手厚い。解説は50頁以上あるが生涯を追うだけのタイプ。「文化史上より見たる日本の数学」宋元の算木により高次方程式を解く天元術が関孝和の筆算式演段術に継承された。西洋の影響は意外に少ない。運用に長ずるが論理や実験科学の精神に乏しいため、問題の解義が発達して証明や検証はなおざりにされた。建部賢弘の帰納的推論や会田安明の最上流など関流と周辺の事績がわかる。2022/09/11

れどれ

3
いうなればガラパゴススーガクとして江戸時代に振興開展したという和算の実情を、渉猟に苦心したらしい古い資料からただ整列してくれるだけでも読んでいて興味深いのに、さらには筆者独自の眼光に照らされて、日本人の気質やら芸術観やらとの接続をあぶりだし、ひいては現代の数学のシルエットとは全くかけ離れた像が結ばれていく論法のさまには絶えず好奇心がむっくむっく止まなかった。読み終えてなお気になることたくさん。文章も書き手の体重のってるのに軽快という調子でやたら心地いいし、だんぜん他の著述も読んでみたい。2017/04/08

R As Well

3
面白かった。実用的でもなく学問的な探求でもない趣味的な数学としての「和算」が、強者たちがその数学術を競って問題を出し合う中で、江戸時代中後期というわずかな期間のみの文化にもかかわらず、解題の技術としては洋算に勝るとも劣らない発展を遂げたというのは、歴史の妙として大変面白い事実であると思う。明治維新後、西洋輸入の技術を理解するため、和算が打ち捨てられて洋算が採用されたというのは時代の要請上仕方のないことであるが、和算は和算で、洋算とはまた違う掘り代のあった鉱脈であったように感じてならない。大変面白く読めた。2017/02/05

hazama

2
3行でまとめると、「日本人ってばオタクエリートだし―、情に弱いとこもある国民的趣味人だけど、外国からちょこっとしか伝わらなかったものだって改☆造して芸術レベルに使いやすくしちゃうぞ」2010/11/01

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