岩波文庫
黄金の驢馬

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  • サイズ 文庫判/ページ数 519p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003570012
  • NDC分類 992
  • Cコード C0197

内容説明

唯一完全な形で伝わるローマ時代のラテン語小説。梟に化けるつもりが驢馬になってしまい、おかげで浮世の辛酸をしこたま嘗める主人公。作者の皮肉な視点や批評意識も感じられ、社会の裏面が容赦なく描き出されており、2世紀の作品ながら読んでいて飽きさせない。挿話「クピードーとプシューケーの物語」はとりわけ名高い。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みっぴー

50
ほぼ下ネタ(  ̄▽ ̄)夜中のテンションで書き上げたのでしょうか(笑)確か作者は123年生まれ。妄想する、書き留める、は遥か昔から連綿と受け継がれてきた人間の本能らしいです。『黄金の驢馬』は、間違って驢馬に化けてしまったルキウスが、人間社会の汚い面をこれでもかというくらい見せつけられる話です。最終的には人間の姿に戻って信仰に目覚めるのですが、このオチは少々微妙でした。〝運命の女神は盲目〟としきりに嘆くルキウスですが、動物にも運が良い悪いってあるのでしょうか?2016/10/16

SIGERU

32
主人公ルキウスは、好奇心から魔術に手を出し、驢馬に変身してしまう。人の理性をもった驢馬の苦難の放浪を追った、痛快な変身綺譚。紀元2世紀の成立。古代ローマの爛熟期だけあって、活写される社会や風俗は、淫靡頽廃をきわめている。寝取り寝取られの艶笑譚あり、野には盗賊たちが跳梁跋扈し、殺人も日常茶飯事。貴婦人と驢馬の淫猥な寝物語まで披瀝され、何でもござれの落花狼藉ぶりだ。当時のリアルな日常が丹念に描かれたかと思うと、とつぜん魔女による咒術が当然のように行われる。現実と魔術が共存する世界観は、むしろ新しい。2022/04/19

syaori

30
「好奇心はほどほどに」、この物語の主人公ルキウスほどこの言葉が似合う人物はいないでしょう。好奇心から魔術の真似事をしてロバになったのを皮切りに、それこそ命が幾つあっても足りないような目に遭います。鞭打たれたり、屠殺されかかったり…。それでも好奇心は衰えず、ロバなりに様々な事件に首を突っ込み、事件後の情報収集にも余念がないルキウス。もういい加減にすればと言いたくなるのですが、彼の集めた話は不思議な話、艶笑話に復讐譚と様々で興味を引かれるものばかり。結局こちらも彼の話に好奇心丸出しで聞き入っていたのでした。 2016/06/16

内島菫

26
主人公の青年ルキウスは、魔法で梟になるつもりが誤って驢馬になってしまい、様々な厳しい境遇へと流されることで浮世の辛酸をなめ、最後に唐突にイーシス女神により人間に戻り信仰の生活に入る。が、全体的ににユーモラスな雰囲気が漂うのは、民話風な語り口や、語り手の中身は人間で外見は驢馬というちぐはぐな状況、また。語り手の受け身で自身の身の上であるにもかかわらず他人事のように語る態度(回想の形式のせいもある)、途中に挟まれる数々の逸話に出てくる神々の人間臭さや人々の飾らない(飾らなさすぎる)荒っぽさや2019/09/24

春ドーナツ

19
おおらかな訳文に触れていると十返舎一九の本を読んでいるような気分になります。プロットはマトリョーシカ式でマジックリアリズム全開です。2世紀の小説を読む。「体験する」の方がふさわしいかも知れない。現存する古写本は11世紀フィレンツェにあるものだそうです。古の人々の好奇心とその熱意に感謝。解説によると今から千年前に「源氏物語」が書かれて、さらにその千年前に本書が記されたそうです。「流転の海」という言葉が思い浮かびました。同書を紐解く前に「古代ギリシアがんちく事典」で予備知識を得たことが役立つ。2018/12/08

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