出版社内容情報
マルクスが自ら生涯の事業と呼んだ『資本論』.レーニンが“現世紀最大の政治経済学上の著作”と呼んだように,近代資本主義社会の経済的運動法則を徹底的に究明して,経済学を“革命”し,また人間社会に対する見解に完全な変革をもたらして,社会主義を科学的軌道に乗せた不朽の名著.ディーツ版による改訳.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
43
「労働」と「労働力」が使い分けられている。同じ使われ方をしていた言葉に使用価値と価値があった。労働は使用価値に見合い、労働力は(交換)価値に見合う。労働力とは商品としての労働のことだとすると、労働力を本来は労働に、価値ではなく本来は使用価値通りにというマルクスの意図が読み取れる。マルクスは商品生産の所有法則が物象の力によって成り立っており、それが資本家の労働者に対する力の源泉だという。しかし、物象の力が無い現実を考えられるのか。戦争や原子力と同じように、「~が無い」世界はつくることが出来ない。2023/06/22
非日常口
20
ピケティが店頭に並ぶが、その前にこの5篇15章の冒頭「労働力の価値は平均労働者の習慣的に必要とする生活手段の価値によって規定される」から展開される生産の箇所を読むべきだ。賃金は生産であり、利潤という分配の問題ではない。協業による算術的な足し算以上の結果から、さらに出来高賃金による競争の加速とは何をもたらすか。寒冷化による本源的蓄積の過程が本書に詳しい。国家だけでなく資本主義システムの根底にある暴力。景気循環とイノベーションにより恐慌になっても相対的過剰人口から革命は起きないという宇野の恐慌論との差を認識。2014/12/18
またの名
17
「徴収した年金では老後を賄えないので自助ヨロ」とぬかす国家はその役割をもはや放棄した強制集金マシン同然だけど、そもそも国家は搾取推進のため動いてきたと論じるのが本源的蓄積論。あらゆる神話的物語が正当化する搾取者と被搾取者の分割の始まりには暴力が隠されていて、その後も国家など様々なシステムの助けを借りて分割は拡大伸長されたと論及。とはいえ、資本家もまた資本という非人称的機構の一部として動かされてるに過ぎないと考えるマルクスは、労働者が自分を支配し搾取する資本を自ら作り出しているマゾヒズム的倒錯を見逃さない。2019/05/23
非日常口
17
「収奪者が収奪される」は有名だが、宇野弘蔵の『恐慌論』はそこに論理のズレがあることを指摘した。農業や小商品生産者が解体仕切られると搾取の度合いが増し、閾値を超えた時労働者が革命を起こすのかといえば、あたかも永続するのが資本主義である。マルクス自筆の第1巻3分冊を読んで思うのは、資本主義にもおそらく地球資源・環境の限界などから限界はあるはずだが、労働力商品の再生産から考えると今の人口を維持しているのも資本主義のように思える。元々ない資本主義だったので代替システムは存在するのは明らかだが、まだ見えない。2018/04/25
masawo
13
二十日かけて読了。徐々に「資本」のおぞましい実体の暴露本といった様相を呈してきた。注釈で引用元の著書をdisったりする箇所が意外と理解のヒントになったりする。現代社会における労働の背後には、無数の人々の血塗られた歴史があることに気づかされた一冊。2021/03/12