出版社内容情報
一八六五年の第一インター中央委員会での講演.一般的な賃金引き上げは無益であり,労働組合は有害だとする一委員の主張に逐一反駁を加えたあと,マルクスは自己の構築した経済学に基づいて経済闘争と政治闘争の関係,労働組合の使命などについて積極的な主張を展開する.主著『資本論』への最善の,そうして最も平易な入門書.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
OjohmbonX
10
なんで21世紀なのに週5日も働かなきゃいけない!ってずっと思ってて、読んでみたら多少はすっきりした。労働力の買われ方(賃金制度)に根差して本来の労働価格以上に働かされて利潤が生じる。当時と今でその制度の基本は変わってない雰囲気(労働時間規制や残業代があっても)。それより本書は、ある通俗的な認識を批判する講演録で、具体的にこういう現実的な差異を無視するから謬見に至るんだよっていう、正しさに対する批判というより妥当性に対する批判になってて、零れ落とされた物を拾ってあげて別世界を見せるって作業はわくわくする。2013/05/19
makoppe
5
前半はわかりにくいけど進めば進むほど、マルクスの理論がすっきりまとめられている。マルクスの入門として最適。賃上げの話を基礎において理論が組み立てられているので、組合に関わる人にも是非読んでもらいたい。付録の「労働組合の現在・過去・未来」も読む価値あり。2015/07/16
オーロラソース
5
封建制のもとでは,支払労働と不払労働が時間的・空間的に分離されていた。しかし,賃金制度のもとでは,その両者が一緒に労働時間に含まれてしまうためその違いが可視化されない。よって不払労働が意識されなくなるという指摘が鋭いと思った。2013/08/28
午後
4
1865年4月4日の第一労働者インターナショナルの中央委員会会議における、ウェストンの主張、「(1)一般的な賃銀値上げは労働者たちにとり何の役にも立たぬであろうということ、(2)それらの故に、労働組合は有害な作用をするということ」に反駁するため、マルクスが同年6月20日および27日に行なった講演。ウェストン説は国民生産物の額および現実賃銀の額を不変量であるという誤った前提に基づいている。そのためすべて需要の増加は、供給を増加させるのではなく、ただ貨幣価格の騰貴をもたらすという誤った結論に至ったと指摘する。2023/01/29
それん君
4
p70「諸商品の価値は、それらの生産に使用される労働時間に正比例し、使用される労働の、生産諸力に反比例する。」→生産諸力の説明はp69「第一。労働の自然的諸条件、たとえば、土地や鉱山の豊穣度など。第二。労働の社会的諸力の進歩・改良であって、これは、大規模生産、資本の集積と労働の結合、労働の再分割、機械、作業の改良…(中略)…およびあらゆる他の発明ーすなわちそれによって科学が自然的諸能因を労働に奉仕させ、またそれによって労働の社会的または協力的性格が発展するような発明から得られる。」