内容説明
アダム・スミスが1763年頃、グラーズゴウ大学の道徳哲学教授として行った法学講義の筆記録。彼は1759年に刊行した『道徳感情論』の末尾で、「法と統治の一般的原理」についての新たな著作を予告し、その半ばは『国富論』(1776)と結実したが、法学の理論については、晩年までその意志を表明し続けたが果すことなく没した。
目次
第1部(司法;公法学;家族法;私法;契約)
第2部(生活行政;軍備;国際法)
附録(国富論草稿;分業論断片)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
100
アダム・スミスの法学についての講義録で未完となっています。最初の方はいかにも法哲学的な観点の本でしたが、後半はどちらかというと経済的な観点をも含んだものとなっていて国富論的な感じでした。非常に論理的な考え方を提示してくれています。経済法学的な感じの本ですね。2017/07/17
加納恭史
16
ルソーの「社会契約論」やモンテスキューの「法の精神」も読んだが、もやもやしてどうも分かった気がしない。ルソーは司法について記述がないし、モンテスキューはやはり冗長だしな。そこでアダム・スミスなら商売と法律の結びつきが分かり易いかなと思った。この本で司法の確立が遅かったことが分かり、ややほっとする。書物も宗教や倫理学が多いが、政治や法学の世間的な関心は低いのかな。この本はアダム・スミスが1763年頃、グラスゴー大学の道徳哲学教授として行った法学講義の筆記録。この本は司法から歴史的経過を展開する。読み易いな。2023/08/05
Haruka Fukuhara
11
なかなか理解するのが難しいです。というのはまず時代状況やアダム・スミスの人生におけるこの本(講義)の位置づけを把握しないと正確な理解は難しいと思われるので。あと法学に関する講義を行った際の学生のノートを基にしたものの翻訳なので、その意味でも理解が困難ということがあると思います。スミスが法に関してどんな思想を持っていたのか大雑把に把握する程度なら一通りページを捲れば何となくわかります。2017/07/10
有沢翔治@文芸同人誌配布中
8
アダム・スミスはグラスゴー大学で法学の講義も受け持っていた。学生の筆記録が発見され、復元に至る。『法学講義』と言っても法律だけでなく、社会の諸制度、社会正義など広範な分野を考察。ホッブズなどの議論を引き継ぎながら、国家の歴史・役割、立憲君主制などについて言及している。http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51516550.html2020/12/26
あんどうれおん
7
経済学の巨匠による法学講義を、学生が書き取ったのち清書したとみられる講義録(の邦訳)。意味がつかみづらい記述や誤記または誤認も散見されますが、ていねいな注釈と解説にずいぶん助けられました。大学の講義らしく、と言って良いかは存じませんが、18世紀ごろのイングランドとスコットランドの社会について聞き手が知っていることを前提にした話も多いように感じました。そうした本題の背景について、もう少し理解した上で再挑戦したくなる骨太な一冊です。2021/10/02