出版社内容情報
主題はイングランド王国の世界貿易掌握論であるが,ここでペティは,市民社会の理論的分析と統計的実証の渾然たる一体を示す「政治算術」をはじめて定式化した.「政治算術」は,ペティの理論・方法の到達点=「経済学が科学として独立した最初の形態」であり,本書は近世経済学・統計学の始源的古典である.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
78
経済学の初期の文献で当時の状況をこのように全体感を持って分析していたとは非常に驚きます。先日ダニエル・デフォーも経済分析をしていたという本を読んだばかりですが、この本も小冊子ながら非常に当時の経済情勢がよくわかる気がします。西洋経済史の基礎的な文献なのだということなのでしょう。オランダの情勢や産業政策についても敷衍されていて昔読んだ覚えがあるものの今回ほどには気がついてはいませんでした。再読の効用ですね。2023/10/19
うえ
10
「人間というものは、衰運に際会したり、自分の業務について悪い判断しかもてなくなると、わが身にふりかかる災難に対して、一層精だして抵抗しようとするどころか、その反対に、いっさいの努力を怠り…考えたり、講じたりしようとはしなくなる」「政治算術とはいかなるものであるか、つまり①人民・土地・資財・産業等々の真実の状態を知ることの効用はなにか、②国王の臣民は、不平家諸君がそういいたがっているほど悪い状態にはない、③共同一致・勤勉および従順は、共同の安全のためにも、また各人各個の幸福のためにも、偉大な成果がある」2019/07/24
左手爆弾
3
内容自体は地味なのだが、当時の国家における横の関係をつかむには極めて重要な著作であると思われる。イングランドから見たオランダやフランスの印象と分析、地政学的な問題を産業でどのようにカバーするか、そうした視点で描かれている。また、縦で見た場合には、人間が社会とか国家といったものを、為政者の勘や名人芸ではなく、計量と統計に基づいて理解するようになることの、転換点であるように思われる。これは極めて現代的な社会科学への道のりを開くのではないだろうか。2015/01/11
Józef Klemens Piłsudski
1
アダム・スミスどころか重農主義の思想も固まってない頃の著作で, 現在からすれば社会現象に対する考察は甘いのだが, そういう時代であるのに都市人口 (無産市民)の増加を工業化をもたらすものであるとして, これを肯定的に捉えていたのは面白いと思った2016/07/27