出版社内容情報
類、種、個の絶対媒介の論理、いわゆる「種の論理」を構築した論文3編を収録。1930年代の日本と世界を覆った全体主義に対峙する社会的実存の論理を提示、「田辺哲学」を確立した論文群である。
内容説明
「西田哲学」と並び屹立する「田辺哲学」の樹立者田辺元。その哲学の精髄を伝える選集。絶対的なものを無媒介に立てる立場を批判し、類、種、個の絶対媒介の論理、いわゆる「種の論理」を構築した代表的論文三篇を収録。全体主義に対峙する社会的実存の論理を提示した論文群。
目次
社会存在の論理―哲学的社会学試論
種の論理と世界図式―絶対媒介の哲学への途
種の論理の意味を明にす
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キョートマン
17
たいへん読みにくい。そもそも「種の論理」自体が変遷している概念であって、それを追うのが難しかった。社会構造と数学物理の構造の関係が単なるアナロジーではないと言っているけど、その理屈がよく分からなかった。2022/01/11
記憶喪失した男
12
十四文字の文章を読むのに何時間もかかるような難解な哲学書。気合いを入れて読破した。独創的な思想が描かれていると思う。2017/01/29
amanon
5
非常に難解な本で、半分どころか、その十分の一さえ理解できたかどうか怪しい。でも、なぜか妙に吸引力を覚えて、つい手にとってしまい、特に終盤は半ば意地で読み終えることに。とりあえず印象に残ったのは、著者独特の弁証法に対するこだわり。ヘーゲルの弁証法に全面的ではないにせよ「否」を唱える著者の立場について論証を加える人が皆無というのは、どうしたことか?西田哲学があれだけ取りざたにされるのであれば、この田辺哲学にももっとスポットが当てられるべきだし、そうしないと京都学派の意義も明らかにされないと思うのだが。2012/06/27
KN
4
個でも普遍でもなく、社会を究明するものとしての種の論理を展開し、全体主義に抗する書。ただし、国家と社会の間に明確な線を引き社会の結社的ネットワークの力で全体主義に抵抗するといった現代的なモメントは見られず、むしろ社会のもっとも具体的な形態が国家であるとされる。ただしここでいう国家とは現にそこにある権力体のことではなく、自由な個に媒介された類的国家であるとされているが。正直な所この論理が現実になる様を思い描くのは難しく、むしろ南原繁が危惧したように全体主義のイデオロギーとして機能する様が思い浮かぶ。2017/06/22
まふろ
4
難解で一度では容易に理解できない。本書は親切な構成になっていて、最初に社会の存在論を作るという動機のもとに種の論理を構想した論文、続いて、哲学そのものの次元で種の論理を展開した論文、そして種の論理の諸動機を振り返り、その梗概を解説する論文の順序で配列されていて、理解が順々に深まるようになっている/個人的には自分は割と田辺の立場に共感できるところもある。例えば種的基体に対して個が離反するが、その個が自らの否定を極限化して自己否定にいたることによって、種を類へと媒介するという図式には賛成するし、2013/10/27