出版社内容情報
命題の集積から成る極限にまで凝縮された構成,独創的な内容.「語りえぬものについては,沈黙せねばならない」という言葉で終わる本書は,ウィトゲンシュタイン(1889-1951)が生前刊行した唯一の哲学書である.
内容説明
「およそ語られうることは明晰に語られうる。そして、論じえないことについては、人は沈黙せねばならない」―本書は、ウィトゲンシュタイン(1889‐1951)が生前刊行した唯一の哲学書である。体系的に番号づけられた「命題」から成る、極度に凝縮されたそのスタイルと独創的な内容は、底知れぬ魅力と「危険」に満ちている。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
71
高校時代に他の訳で初めて。学生時代には原書も。ヴィトゲンシュタインは後に日常言語分析に転向していった。が、吾輩は初期のこの論考こそが彼の主著であり続けると確信。現下のAl全盛、生成Alを鑑みると尚更 その感を強くする。言語という原子は素粒子……というより言語量子こそが人間の想像の時空をビッグバン的に肥大させている。
ころこ
41
写像理論はいうまでも無く間違っていますが、思考可能なものと思考不可能なものとの境界について一貫して言及しています。「いかなる命題も自分自身について語ることはできない。なぜなら、ある命題記号が当の命題記号自身のうちに含まれることはありえないからである」というのは、『青色本』でいわれているフレームの比喩と同じことを既に考えていたのが分かります。眼の画が登場する「視野はけっしてこのようなかたちをしてはいないのである」も同様です。「論理形式を描写しうるには、われわれはその命題とともに論理の外側に、すなわち世界の外2019/01/31
佐島楓
41
数式が出てくるのに閉口して、ラッセルによる解説を読んでもよくわからなくて挫折した。2015/09/26
まさむ♪ね
40
なぜだろう、この哲学書はわたしのこころを一突きにし、思いもかけず不思議な力をあたえてくれる。哲学者は孤独で、そして美しい。哲学という霧のようにつかみどころがなく、深淵で神秘に満ちたなんだかよくわからないものにたったひとりで立ち向かう。うねる思考は天翔ける龍のごとく、あの厚い黒雲をつらぬき、いまにも外界へと飛び出さんばかりだ。夜空にうかぶ数多の美しき記号たちは目的地をさし示す道しるべか。しかし、あるいは答えなど永遠に出ないのかもしれない。それでも孤高の哲学者はここに一応の決着をみる。2018/07/29
踊る猫
34
数式は飛ばして読んだようなものなのでこの本を何処まで理解出来たか覚束ないのだった。情けない。世界の深淵さに触れたような、清々しい読後感を味わったことを告白したい。問いを言語によって、論理的に立てられた時にその答えもまた(それが現実的に私なら私の能力の限界を超えているとしても)論理的に導き出せる、とウィトゲンシュタインは説いている。非論理的なものはそれが言葉/論理によって組み立てられている以上存在し得ない。世界を単純明快に考えるためにこのテクストはなかなか「使える」と見た。そして世界は私を超えて存在するのだ2020/01/03