出版社内容情報
スペイン支配下の南イタリア独立を企て挫折した自らの改革運動の理想化の試みとして,カンパネッラ(一五六八―一六三九)が獄中で執筆したユートピア論.教育改革をはじめ,学問,宗教,政治,社会,技術,農工業,性生活等人間の営為のすべてにわたる革新の基本的素描が対話の形で展開される.ルネサンス最後の巨人の思想を集約した作品.
内容説明
スペイン支配下の南イタリア独立を企て挫折した自らの改革運動の理想化の試みとして、カンパネッラが獄中で執筆したユートピア論。教育改革をはじめ、学問、宗教、政治、社会、技術、農工業、性生活など人間の営為のすべてにわたる革新の基本的素描が対話の形で展開される。ルネサンス最後の巨人の思想を集約した作品。
目次
1 都の建築的構造
2 都の統治形態
3 政体・職務・教育・生活形態
4 性生活
5 軍事
6 仕事
7 食事と健康法
8 学芸と役人
9 宗教と世界観
10 世界の現在と将来
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みっぴー
49
モアによる『ユートピア論』の簡易版です。獄中の中で執筆したらしく、作者の血と涙の結晶とも言える作品です。理想郷「太陽の都」は、七つの壁に囲まれていて、壁には教科書のように知識が書き綴られている云々…。ファンタジーのような記述から始まるのですが、人々の義務や権利は大体ユートピアと同じで、私有財産の否定、家制度の重要性、勤勉、健康、誠実…軍隊式の規則正しい集団生活こそ最上の幸福だそう。『ディストピアから秘密警察を除いたものがユートピア』で間違いなさそうです。2016/10/30
lily
34
ユートピア思想よりも解説によるカンパネッラの残酷な生涯の方が何倍も衝撃的。死か狂人になるかの選択しか与えられなかったのだから。時代背景的にもルネサンスの終焉では自由度の低い思想で満足であったのも頷ける。2019/07/01
サイバーパンツ
11
政治犯として捕まり、監獄で一生を終えたカンパネッラによるユートピア論。形式としては、ジェノヴァ人が理想郷「太陽の都」について、聖ヨハネ修道会の騎士に語るというもの。格差がなく、勤勉で国民の知的水準も高いというのは理想的だが、職業も食事も男女関係(生殖相手としての)も、さらにはその生殖のタイミングも、決められているのは、なかなかディストピア。しかも、決めるのが占星術なんてオカルトでは破綻必至だ。全て与えられるのは楽だが、やはり、自由が無いのはつらい。ユートピアとディストピアは紙一重というのがよく分かる一冊。2016/08/24
壱萬弐仟縁
9
1602年初出。太陽市民は、所有権について利己心から貪欲に公共を横領し、詐欺師や偽善者になると指摘(24ページ)。人生訓として大切なこと。都の人には痛風、カタル、神経痛などはない(72ページ)。健康的。炎症や急性痙攣は患った。カンパネッラ本人は貧しい文盲の靴職人の長男(146ページ)。多様な関心に脱帽。宮沢賢治なイーハトーブ的かも?2013/04/13
シルク
8
『太陽の都』って児童文学があるらしいと聞きましてね。図書館の検索システムで探してこれが出てきて、「次の移動図書館で持ってきてもらお~」と頼んだ。したらこれが来た(笑) 題名が同じで間違えちゃった、せっかく届けてもらったんだし、読もかー…と読んだ。奇天烈な感じのユートピア論。本編より、「二十五歳から六十歳までのほとんどを獄窓にすごし、監禁や幽閉の生活は三十三年あまりにおよんだ。」(p.144)という著者の紹介のが心に残る。『岩窟王』に、牢に捕らえられてる学者爺さんがいたでせう。あの人がしきりに頭に浮かんだ。2023/03/29