出版社内容情報
人間が人間に贈りうるもののうちで,人間が心情の奥底で自分自身に語ったものにまさる贈り物はない.『宗教論』を著したドイツの神学者・哲学者シュライエルマッハー(一七六八―一八三四)は独自の哲学的世界観および人生観を語り,「一つのお年玉」と記して一八〇〇年,新しく迎える世紀に寄せる贈り物とした.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
86
人間が人間に贈りうるもののうちで、人間が心情の奥底で自分自身に語ったものにまさる心おきない贈り物はない。この言葉以上に私を癒すものはあるかな。私が読書する理由と全く同義だ。精神の世界の引力である愛、感受性、優しい心遣い、内的生活の成長、自由の意識、外的生活の影響を受けない本質の平和と静安な統一、青年と老年を結婚させ青春の保持。シュライエルマッハーの人生の軸とする価値観を抱いた豊かな人間性を本日の枕としよう。2021/03/13
壱萬弐仟縁
49
人間は時間におけるその生存と、真昼のような享楽の頂上から絶滅の恐ろしい夜への滑降とのほかに何も知らない(12頁)。自由は私にとってすべてのもののうちで最も根源的なものであり、最初のものであるとともに最奥のものである(22頁)。よりよい世界に属するものが陰惨な奴隷の境涯に歎息している(76頁)。富裕の只中における悲しむべき貧困よ! 倫理と教養とを求めるよりよき人が世界を相手に加勢もなしに戦っているのだ(81頁)。人間はただ自分を売ることによってのみ奴隷の境涯に陥るのである(103頁)。 2022/02/11
無能なガラス屋
7
あまりに達観された文章なので老年期に書かれたものだとばかり思っていたが、まさか30代の著作だったとは。「時を基にして精神の力を予言するなどということは、お前の馬鹿さ加減を示すものだ!時は決して精神の尺度とはなりえないのだ!」(p121)内的生活における二人目の師匠を見つけることが出来てとても嬉しい(ちなみに一人目はヒルティ)。「人間が人間に贈りうるもののうちで、人間が心情の奥底で自分自身に語ったものにまさる贈り物はない。」最高のお年玉でした。2020/09/19
うえ
6
『独白』の本文は半分で、残り半分は有益な解説になっている。もともとはゲーテなどがはじめた「小説」という形式を用いて、自己の倫理観と人間観を盛ろうと考えていたが、それは果たせず、残されたのがこの独白。「シュライエルマッハーはやがて明らかな意識をもって、「人間性を決定的な個性に形成し、そしてその個性を多様な行為のうちに表現する」ことが自分の天職であると規定する。したがって、彼は自己の教養を助成するすべてのものに注意を向けなければならなかった。彼はあらゆる芸術の中にさえまず倫理的なものを見なければならなかった」2022/09/02
なつき
5
シュライエルマッハー『独白』再読。岩波文庫、木場深定訳、1995年。いやあ、やはりシュライエルマッハーのいまでいうエッセイ集というところですな! シュライエルマッハーの世界観もなかなか独特なんで、読み物としておもしろいです。ただやはり『宗教論』のほうを読んでいかんと、かな……。2017/11/08