内容説明
ドイツの美術史家ヴァールブルク(一八六六‐一九二九)が見た世紀末アメリカの宗教儀礼。蛇は恐怖の源か、不死の象徴か。プエブロ=インディアンの仮面舞踊や蛇儀礼は、やがてギリシア・ローマやキリスト教の蛇のイメージと交錯し、文化における合理と非合理の闘争と共存を暗示する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッピー
30
ユダヤ系ドイツ人によるホピ族の重要な祭りであるスネークダンスについての考察。魔術のシステムは、古代から人類の社会で受け継がれ続け、現代においてもその痕跡を残しているということは、納得できることですが、訳者のあとがきで知った19世紀末~20世紀初めの欧州、特にドイツでのユダヤ人の意識、そこから派生した著者ヴァールブルクを含む巨大な知の系列には圧倒されます。直接ホピの人々と触れ、今は非公開となっているスネークダンスを目の当たりにした記録であること、今となっては貴重なホピの写真を多数収録していることも魅力です。
ゆとにー
9
魔術的一体化から象徴化作用を経て精神的啓示へと至るとする、宗教儀礼の変容の方向づけは恣意的かもしれないが、文明の進歩にもなぞらえられるこの移行に転倒の可能性を認めているのが面白い。その移行段階の基準を引き受けるのが蛇の図像に他ならず、理性と啓蒙を標榜する西欧文明のうちにも、偶像崇拝の対象やサタンの使いとして明らかに反目するはずの異教的図像が脈々と残存することが示される。 蛇は、掴み所のないぬらぬらとした形状や動き方を特徴とするのに加え、2018/11/22
猫またぎ
7
映画や小説で蛇が現れるとあれやこれやと意味づけ、分析してしまう癖がある。それこそ蛇足だ。2023/06/01
りょう@りんご売り
7
西洋中心主義的なところがあるのはこれが書かれた時代を鑑みて目をつむろう。まず、趣旨としては人間は未開の状態では具体的なものをシンボルとして魔術的行為を行っており文明化されるにつれそのシンボルは内面的なものになっていったが、合理的な社会においても非合理なものは脈々と受け継がれ生き残り続けている、ということが書かれている。しかし、最も興味をそそられたのはネイティヴアメリカン達の儀式や宇宙論に関しての報告であった。2018/04/20
misui
7
講演自体はわかりやすい。未開と呼ばれる社会における象徴儀礼はたとえ魔術的に見えるとしても彼らの合理性に従っており、その様相は西洋社会の中にも見出すことができる。この講演が重要なのはヴァールブルクの個人史に引きつけて、あるいは当時の人類学やユダヤ社会などに引きつけて幾通りかの読みが可能なことで、それらのちょうどよい入り口になっている。個人的には仮面と象徴のテーマが立ち上がっていたところなのでいいタイミングで読めた。2016/02/25