出版社内容情報
1927年末から3ヵ月余にわたるイタリア旅行で出会った絵画・彫刻・建築の印象を豊かな感性で書きとめる。
内容説明
一九二七(昭和二)年末から三カ月余にわたるイタリア旅行で出会った絵画・彫刻・建築の印象をみずみずしい筆致で書きとめたイタリア美術紀行。後に『風土』で展開される風土論の萌芽が随所にみられる点も大変興味深い。挿絵多数。
目次
1 出発
2 イタリアに入る
3 ローマ滞在
4 ナポリとその付近
5 シチリアの春
6 アシシの壁画
7 フィレンツェ滞在
8 ボローニャ、ラヴェンナ、パドヴァ
9 ヴェネチアに病む
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
92
当時、京大助教授であった和辻哲郎が文部省派遣留学生として欧州に渡ったのが1928年、38歳の時。およそ三か月をかけイタリア各地を主に鉄道を使い巡る。その折々、日本の夫人に書き送った手紙を編集したもの。(執筆は20年以上も後の50年。)およそ90年前のイタリア事情が知れて興味が尽きない。また、観察が美術作品に留まらず、彼の地の気候、風土に及んでいる。地質にまで関心を示した『イタリア紀行』のゲーテを彷彿させる。日本の文化にも精通している著者は西欧の芸術・文化を、日本との対比で捉え、その風土の違いにも注目する。2021/04/27
Kajitt22
29
漱石や荷風の留学外遊から二十数年後、昭和の初めのイタリア美術紀行。ローマからシシリア、フィレンツェ、ベネチア等、その旅程はゆったりしたもので、当時の日本人のあるいは日本国の余裕が感じられる。若い頃読んだ『古寺巡礼』では旧仮名遣いに苦労しながらも、格調高い文章に触発され唐招提寺、法隆寺を巡った記憶がある。今回は現代仮名遣いで読みやすく、廃墟の美学に言及していたり、ボティチェリに少し落胆したり等興味深く読むことができた。数年前修復され、鮮やかな色彩が蘇ったというボティチェリを見たら、和辻はなんと書くだろうか。2019/01/08
izumi
24
建物(ギリシャ建築と唐招提寺)や風景(オリーブと柿の木)など、イタリアと日本が丁寧に比較されているので、行った事がなくても情景が目に浮かぶようでした。この本は著者が奥様に宛てて書いた手紙を編集したものだそうです。大切な人に異国の地の様子をこと細かに分かりやすく伝えることで、体験を共有しようとしていたのかもしれません。今の時代だとブログやSNSが該当すると思いますが、大分簡略化されてしまいましたね。2015/08/02
ヤギ郎
17
哲学者・和辻哲郎がイタリアで見聞きしたものをまとめたエッセー。日本と外国(西欧)の違いを細かいところまで記述していて、おもしろい。飯がまずいとはっきり書いていて、現代の日本人旅行者の素直な感想を書いているところが共感できる(そして、笑える)。西洋古代美術についても述べられていて、美術について興味深い見解を得られる。2017/10/27
佐島楓
15
昭和に入ったばかりの作品だけれど、おそろしいことに古さは感じない。美術品の鑑賞眼が凄くて一緒に眺めている気になる。数年前訪れたことがあるが骨董品のような街並みは美しいのでおすすめです。食べ物もおいしいし・・・。しかし今現在の経済的な混乱は大丈夫だろうか。村上春樹さんも書いていらしたが治安がもともと良くないのでお気をつけて。2011/11/24