出版社内容情報
荒涼たる風土.原始的本能のままに生きる人間.斬新な目で故郷シチリアを捉え直し,社会の底辺であえぐ人びとを,その人間的な優しさを,酷薄なまでに簡潔な文体で描いたヴェルガ.「事実を示し,事実に真実を語らせる」という彼の文学は,ヴェリズモ(真実主義)と呼ばれている.「田舎流騎士道」の意の表題作など傑作十二篇.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aika
38
うだるような暑さの季節になると、この作品のまとうシチリアに沈む悲哀が脳裏に浮かんできて、久しぶりに手に取りました。愛に恵まれないまま親を亡くし、孤独の内で育った粗野な少年たちを襲う圧倒的な不幸。これを前にすると受け止めようと思っても耐えきれず、茫然とするより他ありません。マラリアで大切な人を失う恐怖。無と帰した葡萄畑。殺戮。魂の底から叫ばれるこの窮乏と憎悪の果てに、決して報われない赤毛のマルペーロが、羊飼いのイェーリが、ネッダがそれでも何らかの愛、生きる意味のようなものを信じた刹那が、心の奥底に残ります。2021/07/31
aika
37
パンと情愛のために流される血に、貧窮と渇望のシチリアの姿をつきつけられました。あの有名な表題作の間奏曲がかき消されるほどに、受け止めきれない悲哀の連続でした。母親に愛されず人びとに虐げられながら、鉱山で事故死した亡き父の姿を追う粗野な少年を描いた「赤毛のマルペーロ」。病床の親のために働きづめで、それでも純粋無垢に生きて愛を得たはずの少年と少女の悲劇に嘆息しかできない「羊飼いイェーリ」と「ネッダ」。愛する子を失った母親のかなしみと、母親から愛されなかった子のかなしみの永遠性が、どうしても心から離れません。2020/03/14
あきあかね
24
甘い哀愁を帯びた透き通った旋律で有名なオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」が「田舎流騎士道」という意味だとは知らなかった。そのタイトルの通り、著者ヴェルガの故郷であるイタリア、シチリアの貧しい村を舞台に決闘と悲劇がもたらされる。 どの話も、イタリア南部の陽光溢れる華やかなイメージとは異なり、小作農や鉱夫、羊飼いなどの厳しく過酷な暮らしが、余分なものを削ぎ落とした簡潔な文体で描かれる。ヴェルガはシチリアの裕福な地主家庭の生まれだったが、告発でも糾弾でも同情でもなく、⇒2021/01/27
はしびろちゃん
6
救いの無さ、やるせなさに満ちた終幕の短編が詰め込まれていて、最後の方はきっとこの話でも登場人物なに幸せは訪れないなと諦める始末なわたし。でもこういう重苦しさ、リアリティが好き。訳者買いで読んだ本なので解説がぎっしりでにっこり。2021/09/18
お茶
3
とりあえず表題作。もちろん題名買いなんだが、とてもあっさりしているように見えるのはシチリアのことを知らないからなんだろうか2023/06/17