出版社内容情報
この作品のヒロインはアンナである.しかし作者が描いたのはアンナの悲劇だけではない.彼女の夫カレーニン,彼らと対照的なレーヴイン夫婦,そしてオブロンスキイ夫婦を,さまざまな事件を配しながら微細に描写する.読み進むうちに読者は,愛とは,結婚とは,生活とは,といった問いを,自らに発していることに気づくのである.
内容説明
アンナは兄オブロンスキイの浮気の跡始末に、ペテルブルグからモスクワへと旅立った。そして駅頭でのウロンスキイとの運命的な出会い。彼はアンナの美しさに魅かれ、これまでの放埓で散漫だった力が、ある幸福な目的の一点に向けられるのを感じる。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
美雀(みすず)
43
ロシアの風習なのかな?呼称と正式な名称があまりにも違うので、いちいち登場人物欄で確認しなければならず時間がかかってしまった。やたらに名前が多すぎてこんがらがってしまう。ウロンスキーとアンナは好きになれない。レーヴィンとキチィの行く末も気になる。ロシアはヨーロッパとは違うのか?確かにそういうイメージはあるかもしれない。2015/07/12
かえる
21
「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。」という有名な一文から始まるが、一向にアンナが出てこない。ということは隠れ主人公なる者がもう一人いるか、全員が主人公だと言っても不思議ではないくらいに人物が生き生きと描写されていて面白い。アンナ登場で物語は加速。モスクワを発つアンナの乗った列車とレースの事故が印象深い。面子を大切にする退屈な夫より情熱的な男に魅力を感じるのは理解できるけど、アンナよ、息子いるんだよ、あぁ、抑えてよ..。上手くいかないところが読み止まらない。2019/10/08
Bashlier
19
5/5 人物描写が濃厚な作品。非常に長い作品だが、まるで登場人物の息遣いが聞こえてくるようだ。1861年の農奴解放以後、微妙な時期の同国経済を非常に深く書き込んでおり、表立ってはないもの1917年ロシア革命の足音が随所に聞こえてくる。ストーリーは不倫ものであるのだが、はっきりいえばそのこと自体はあまり重要でない。アンナとウロンスキイの愛憎劇にスポットライトが当たりがちだが、実際に重要なのは市場経済に目覚めるレーヴィンの生き様であろう。2017/10/23
みゆき・K
16
「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」10年くらい積んでいたが、ようやく手に取る。途中何度か挫折しそうになったが、冒頭の名文を思い出しながら読了。人物描写と心理描写が秀逸で、誰が主人公でも成立しそうな作品だ。これは不倫か?純愛か?境界線が難しい。ウロンスキイって結構嫌な奴じゃない?私はレーヴィンの方が好きだな。キチイの変貌も気になる。続いて中巻へ。2023/06/28
Francis
12
20数年ぶりぐらいに再読。心理描写が詳細で上手く表現されている。この辺りの表現はドストエフスキーとは異なる味わいがあると感じる。私はドストエフスキーの小説世界にかなりなじんでしまっているので今更トルストイの小説世界にははまれないな、とも思ってしまったのも事実。2023/03/25