岩波文庫<br> 悪霊〈下〉

岩波文庫
悪霊〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 673p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003261439
  • NDC分類 983
  • Cコード C0197

出版社内容情報

この作品においてドストエーフスキイ(一八二一‐八一)は人間の魂を徹底的に悪と反逆と破壊の角度から検討し解剖しつくした.聖書のルカ伝に出てくる,悪霊にとりつかれて湖に飛びこみ溺死したという豚の群れさながらに,無政府主義や無神論に走り秘密結社を組織した青年たちは,革命を企てながらみずからを滅ぼしてゆく.

内容説明

非凡な頭脳と繊細な感受性そして超人的な体力に恵まれながら、思想も感情も分裂し、悪徳と虚無に生きる呪われた男スタヴローギンを主人公に、狂言的革命主義者ピョートル、ロシア正教に根ざす民族主義者シャートフ、徹底した反宗教的個人主義に生きるキリーロフら、革命思想に憑かれた人間たちの破滅を描く現代の黙示録。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

yumiha

25
読めない漢字やどこの国の言葉かもワカラン箇所を推測で読み飛ばし、読了した673ページ。社会の変革期や過度期に求められるカリスマ性のある人間、それを利用しようとする策謀家、そんな人間を取り巻いて破壊衝動に操られる若いエネルギーなどなど、すでにドストエフスキーが看破した図式、今も同じ光景が繰り返されている。トランプ氏とかISとか。また、ドストエフスキーのどの作品にも、無神論を対置しながら神とは何かという問いかけがあるが、それは死が近づきつつあるスチェパン氏の思想(?)がひとつの答えなのだろうと読んだ。2016/05/24

にしの

7
再読本。なんやかんや読むのに1ヶ月かかってしまった。訳の関係か、言葉は古いけれど初読よりも物語がまとまっている印象をうけた。単に読み手がすでに物語と結末を知っているからか。悲劇というよりは、神の視点にあるドストエフスキーが愚か者たちの群像劇として喜劇を描いたように感じた。どの人物の愚かさ、思想にもどこか共感するのは疲れているのか、あるいは僕もドストエフスキーのいう悪霊憑きなのかもしれない。スタヴローギンは可哀想なやつだが、何も信じられない悲しさには共感できる。何よりもキャラクター達が濃い作品だ。2023/10/12

アリョーシャ

6
10年振りくらいの再読。主人公のスタヴローギンの抱える闇とともに、作品全体を覆う暗さのせいか、とっつきにくさばかりが記憶に残っていた。それでも読み始めてしまえば、のめり込んでしまうのがドストエフスキー。美しい場面やハラハラドキドキで読み進める「罪と罰」「白痴」「未成年」と比較して、一つ一つの登場人物や場面を味わいながら読み進めていくことになった。単発の美しい場面で「ここ」とは決めがたいが、くり返し読んで発見がある作品なのかも知れない。とはいえ、ドストエフスキー作品に云々は無用。興味があるならまずは読め。2015/12/19

肉欲棒太郎

5
キャラ立ちしてるのはピョートル、キリーロフ、シャートフの3人だと思うが、あえてスタヴローギンを主人公にしているところがみそか。前者は三者三様であるものの、それぞれ何らかの思想を「信じる」者だが、スタヴローギンはそのような思想そのものを「信じない」虚無主義者である。ヨーロッパでは第一次大戦の戦禍がニヒリズムの時代の到来をもたらしたが、1870年の時点でそれを先取りするかのような小説を書いていたドストエフスキーの慧眼には恐れ入る。2017/03/12

しんすけ

5
50年前、自民党政府が倒れたら日本は素晴らしい国になると思っていた。しかしこの悪徳政党は何故か国民に人気があった。当時のメディアには今と違って反自民の空気が濃かったはずだが。どう時代が変化しても、常に悪徳が大勢を占めるものだ。と、ドストエフスキーは言いたかったのだろう。この小説が革命派の内ゲバの形で終焉を迎えるのは、理想は「山のあなた」にしかないと訴えているからでないか。それが、30代前半のぼくを強く撃ち、ストリーを忘れても記憶に残る作品になったのであろう。2016/04/22

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