岩波文庫
ルーヂン

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  • サイズ 文庫判/ページ数 219p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003260838
  • NDC分類 983
  • Cコード C0197

出版社内容情報

二葉亭四迷訳「うき草」の題名によって明治以来わが国で知られてきた名作.女地主ダーリヤの邸に現われた一人の男ルーヂン.人々の前では博学多識をふり廻すが,しょせんは意志の弱い冷淡な知識人に過ぎず,のちに革命の理想だけを抱いてあえなくも死んで行く.今日でもなおみられる知識人の一タイプを示す.一八五五年作.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みつ

24
ツルゲーネフの最初の長編小説とのこと。最初は登場人物が多いくせに主人公の登場が遅く、途中からはまるで戯曲のように会話だけで進行するせいもあって、なかなか頭に入らなかった。口を開けばその発言は立派であり、当初は誰もがその博識に魅せられるがやがて距離を置かれ、愛した娘からもその母親からも信頼されなくなっていく。主人公ルーヂンは、頭でっかちの知識人の典型を示しているよう。「ルーヂンの言葉は人を動かすことができない」(p178)とは長く彼を知る友人の言葉。『浮雲』を書いた二葉亭が訳したのも、何となく理解できる。2024/04/03

黒豆

9
知識人でありながら、思想を弄ぶだけで実行に移す強い意志が無い人間のことを、ロシア文学史上「余計者」と呼ぶらしい。初めはルーヂンを天才だともてはやしていたにも関わらず、「余計者」であると見破った瞬間に、周囲が掌を返したように冷たくなっていく様子がよく描かれていた。「新規まきなおし、新規まきなおしで… そのあげくがこのていたらくですからね!」とルーヂンも言っている通り、新天地でも同様の行動を取り、見破られてまた逃亡し…という生活を繰り返すルーヂンがだんだん哀れになってくる。2014/06/07

植岡藍

5
「ルーヂン」はどこにでもいるが、それゆえに誰の中にも自分の中にもいるのではないだろうか。ネットの世界で誰もがいっぱしのコメントをし、悪を糾弾し、もっとこうすればいいのにと見ず知らずの人間にアドバイスをする。そうした我々は、ルーヂンほどにも誠実であっただろうか。当時のロシア、近代、現代を経て、この物語の読み解き方は変わるのではないかと思う。2020/07/26

ひでお

5
本作にも引用されるプーシキンのエフゲニー・オネーギンに似たシチュエーションながら、読後感は大きく異なります。ニヒルなオネーギンとことなり、博識な言葉は吐いても行動を伴わない、自身の保身と誠実さを取り違えた主人公は、現代にもいそうなタイプに見えます。ただ、エンディングは、人生の最後に行動を示せたとも思えます。2019/09/19

Ayane

4
雄弁で博識に見えて一時社交界では話題の中心に上るも、その実は確たる思想もなく実行力もないためにやがて周囲から人が去ってゆく。本人も何かが欠けていると分かりながらも自己陶酔ゆえに軌道修正するには至らない。去り際に一方的に手紙を寄越してくる当たりはどこかの誰かを彷彿とさせた。これを「浮雲(浮草?)」と訳した二葉亭四迷はセンス良すぎ。2024/05/05

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