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岩波文庫
死都ブリュージュ

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  • サイズ 文庫判/ページ数 191p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003257814
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

出版社内容情報

沈黙と憂愁にとざされ,教会の鐘の音が悲しみの霧となって降りそそぐ灰色の都ブリュージュ.愛する妻をうしなって悲嘆に沈むユーグ・ヴィアーヌがそこで出会ったのは,亡き妻に瓜二つの女ジャーヌだった.世紀末のほの暗い夢のうちに生きたベルギーの詩人・小説家ローデンバック(一八五五―九八)が,限りない哀惜をこめて描く黄昏の世界.

内容説明

沈黙と憂愁にとざされ、教会の鐘の音が悲しみの霧となって降りそそぐ灰色の都ブリュージュ。愛する妻をうしなって悲嘆に沈むユーグ・ヴィアーヌがそこで出会ったのは、亡き妻に瓜二つの女ジャーヌだった。世紀末のほの暗い夢のうちに生きたベルギーの詩人・小説家ローデンバック(1855‐98)が、限りない哀惜をこめて描く黄昏の世界。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

優希

85
重苦しさが漂いますが、美しさが感じられます。沈黙と憂鬱に閉ざされる中で、悲しみの教会の鐘の音が響くブリュージュ。愛する妻を失い、過去の幻影の中で生きるユーグ。亡き妻に瓜二つのジャーヌ。そして街の人々。それらを包み込む都市ブリュージュは灰色の死がよく似合います。街の情景にユーグの心情が溶け込んでいるのが独特の雰囲気を漂わせ、閉鎖的な空気に喪失の声を歌い上げているように思いました。人間の悲哀を象徴する都市を描こうとしたのでしょう。深みのある悲哀の流れが印象的でした。2016/07/05

藤月はな(灯れ松明の火)

51
(男性陣の方々には痛い感想です)本来は、喪った妻の面影を追い求めた男の悲劇とも取れる作品なのでしょうが、私には自己憐憫に耽る男の自業自得な見苦しさしか受け取れませんでした。『痴人の愛』の譲治はナオミを自分好みの妻にしようとするエゴイズムが前面に出ていた。対してこの作品の主人公は、アルフレッド・ヒッチコックが映画化した、ボアロー&ナルスジャックの『めまい』の主人公は美しき過去に自ら、囚われながらも美しい過去を象徴する代替を他の人間に無理に割り当て絶望する。狡猾なエゴイズムを自業自得と言わずに何というのか。2013/11/05

みっぴー

49
世界遺産を三つも有する街、ベルギーのブリュージュ。死都などと言われたら、そりゃ住人に怒られますわ…。愛する妻に先立たれ、半死の状態で生きている主人公、ユーグ。彼の精神を体現するのが水と信仰の地、ブリュージュです。この地で妻との思い出に生きているユーグが、ある日亡き妻と瓜二つの女性に出会います。蘇り始めたユーグの人生、しかし灰色の都ブリュージュは、新たな色を挿し入れらることを赦さなかった。この街に変化は必要ない、ただひたすら祈りさえあればいい…そんなブリュージュの声が聞こえてくるようでした。2016/10/19

(C17H26O4)

45
ユーグさん、いくら最愛の妻を亡くし悲嘆に暮れているからといって、他人の空似のジャーヌをつけまわすのはストーカー行為でしょう。彼女に妻のドレス着せ、妻と同じ振る舞いを求め、愛してしまったら、やばい人でしょう。沈黙と憂愁に閉ざされた灰色の都ブリュージュ、教会の鐘の音が霧となり降りそそぐこの都は、ユーグをより陰鬱にする 。いや逆に彼がブリュージュを陰鬱にしているように思える。悲劇は起こる。ユーグは妻の遺髪でジャーヌの首を締め殺してしまった。亡き妻はもう一度死んだのだ。ブリュージュに青空はないの?鬱々とします。 2018/05/21

りー

39
全編に通底するのは男の破滅願望。ブリュージュの灰色の空にどこまでも堕ちてゆきたいという露わに出来ぬ望みを重ねて紡がれたごくごくシンプルな小説。挿入される写真と相まって、非常に完成された一冊になっている。2015/11/14

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