岩波文庫
死刑囚最後の日 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 169p
  • 商品コード 9784003253182
  • NDC分類 953
  • Cコード C0197

出版社内容情報

自然から享けた生命を人為的に奪い去る社会制度=死刑の撤廃のために,若き日のユーゴーが情熱を傾けてかきあげた作品.死刑の判決をうけてから断頭台にたたされる最後の一瞬に至るまでの,一死刑囚の肉体的・精神的苦悶をまざまざと描き出して,読者の心をも焦躁と絶望の狂気へとひきずりこむ.一八二九年.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

のっち♬

127
ある罪である日処刑された死刑囚の苦悶。微に入り細を穿った心理描写は生々しく、偶発性、個人性、特殊性などあらゆる物語性を削いだ構成と相まって時代と場所を超越した普遍性を獲得している。本書は死刑の廃止についての弁論にほかならない。執筆背景を説明した(後年追加された)序文は、熱量から著者が反響に確かな手応えを感じたことが窺われるし、『社会は「復讐するために罰すること」をしてはいけない』といったメッセージ性は『レ・ミゼラブル』にも通底する。道徳的及び社会的感情を失い、旧慣に盲従する法と人間のみじめさを訴えた一冊。2022/01/28

Willie the Wildcat

70
著者の立ち位置『1832年の序文』、特に”3つの理由”を踏まえた本編での検証。故に、主人公の名前、職業、あるいは罪状の記載がないのだと解釈。死刑制度の是非はともかく、「自己制御の可否」が齎す物心両面での変化を、如何に人権という基準で計るのか、が頭に浮かぶ。特に”時間”。例えば、主人公は「5 stages of Grief」の最終ステージを踏むことなく最期を迎えた。補ったのが半強制的な他力。心理的影響が随所に感じられた。最後の最後まで抗う姿勢も、読者への問題提起ではなかろうか。2019/09/15

みっぴー

47
被害者の遺族の気持ちをまるっきり無視している感じがして、死刑囚に同情や憐れみは感じませんでした。冤罪などの問題もありますが、やはり優先すべきは被害者の側。犯罪者を生み出した社会こそ悪であるというユーゴーの主張はもっともらしく聞こえますが、残念ながら生まれながらの悪人、快楽のために殺人を犯す人間がいることも確かです。人は神ではないから、人間の本質なんて見抜けません。法治国家と言えども人を裁くのは所詮人間だということを忘れてはならないと思いました。2016/10/26

SIGERU

34
事実のごとく語るのが写実の極意なら、本書は究極の写実小説だ。だが、ユゴー自身はロマン派を以て任じている。死刑廃止を訴える浪漫的な熱情と、死刑囚をめぐる冷厳な現実の再創造。虚実の皮膜のあわいを十全に表現できる作家がロマン派だとすれば、ユゴーはその最高峰だろう。ビセートル監獄に始まり、処刑の到来を告げる「四時」の恐るべき一行まで、読者を掴んで放さない。事実を単純に繋ぎ合わせるのでなく、素材を吟味し、細心の手つきで按配して、最大の感銘を与える。凡百のノンフィクションも及ばない、これこそが小説の力だ。2022/02/22

かえる

27
一人の男の死刑が確定され、執行までどのような心境で生きるのかありありと描写している。1832年3月、ユゴーが28歳の若さで執筆したようだ。ちょうどこの時代、フランスは激動にあった。7月革命。そんな中で見世物にされるあのギロチンで死刑執行される日が迫り、男の心理状態がなんとも言えない。男にも家族がある。どのような罪を犯したかは明かされていないが、本編の後の序がなかなか読み応えがあった。ユゴーは死刑制度に反対していた。死刑執行人の精神的な疲弊も伝わってくる。死刑制度の是非はそれぞれだけど。2019/04/05

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