出版社内容情報
軽佻浮薄な世相や不正不義を許すことのできない人間ぎらいの青年が,こともあろうに軽佻浮薄を体現したような,浮気でコケットな未亡人に熱い恋をしてしまう.彼のジレンマとそれをとりまく上流階級人士の心理のからみ合い.完成された形式と磨きぬかれたセリフでモリエールは質の高い笑いを醸成し,観客(読者)の微笑を誘い出す.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
S.Mori
8
この作品も喜劇ですが、モリエールの他の喜劇とは異なった哀しい味わいがあります。主人公のアルセストはお世辞の言えない杓子定規な人間です。例えば、知り合いの書いた詩の感想を求められて、自分が感じたままを告げてしまい、トラブルを起こしてしまいます。コミュニケーションということを考えたら、アルセストの生き方は賛成できない面もあります。人付き合いでは相手のことを認めて、ほめることも必要だからです。それでも彼の生き方は、世渡り上手な人達にくらべたら純粋でしょう。結末の寂寥感が胸に沁みました。2019/07/18
フリウリ
7
鈴木力衛氏が自ら訳したモリエール作品の解説で、名作であると繰り返し力説する「弧客」。モリエール読書のさしあたっての最後として、本書を読み始めたところ、すぐに他の版元で「人間ぎらい」と翻訳されているものとわかり、拍子抜け。翻訳は仏文界の重鎮、辰野隆氏。本書冒頭、辰野は本作への熱い思いとともに、「人間ぎらい」ではなく「弧客」と訳した理由を語っていて、辰野に異論を唱えられるはずもなかったでしょうけれど、正直、「人間ぎらい」のほうがいいと思いました。何度読んでも、おもしろいものはおもしろいです。82024/04/08
そーすけ
3
127*「我輩」とか「拙者」とか、だいぶ時代がかった翻訳。まぁ、岩波文庫だから……。新潮文庫版で読んだときは、もっとドタバタ喜劇という印象だった気がするけど、今回は翻訳のせいもあるのか、あまり楽しめず。オロントの詩を酷評し、窮地に陥るアルセスト。2018/07/05
Schuhschnabel
2
モリエール3作目。清廉潔白だが恋は盲目の主人公アルセストが、虚飾に満ちた人間社会をひたすら非難する。2018/07/12
廃墟の人
1
オロントみたいなやつって結構いるから面白い。2013/11/07