岩波文庫
タルチュフ (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 152p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003251225
  • NDC分類 952
  • Cコード C0198

出版社内容情報

金満家のオルゴンは,自称零落貴族のタルチュフを信頼して家政を任せ,娘と結婚させようとまでする.タルチュフはといえば敬虔な信心家をよそおってオルゴンをたぶらかし,財産横領を策し,妻君にも言いよるという始末.ルイ十四世時代の社会を痛烈に諷刺したこの喜劇でモリエール(一六二二―七三)は偽善者の典型を創造した.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

161
初演は1664年ヴェルサイユ宮殿でなされたらしい。日本でいえば、初世市川団十郎等の活躍した元禄文化に先立つこと4半世紀といったあたり。金平浄瑠璃の全盛期といったところか。本作も、その結構の単純さに劇としての古さは否めないが、金平と比するならば、そこに奇妙な同質性もまた浮かび上がってくる。これは、モリエールの数ある劇の中でも屈指の人気作だが、その単純化された背後に人間的な心理が垣間見え、劇中の登場人物たちの行動に首肯せざるを得ないからであろう。また、密かに時の宗教界を揶揄して見せたのも喝采を浴びた一因か。2014/07/08

ケイ

131
お見事。現代にも通ずるこの手口。そして何より騙される愚かさ。証拠を突きつけられ追い込まれるまで気が付かないものも罪。感服するのは、全てを覆せるのは王権であると織り込んでくるモリエールの巧みさ。これを王の前で上演後、どうルイ14世も説得しようとも再上演までは五年かかった。要するにアンリ・ドトリッシュが亡くなって聖体秘蹟協会の勢力が衰えるのを待たなければならなかったわけだ。タルチュフが的を得ていたということか…。バルザックの『プチ・ブルジョワ』はこれを意識して書かれたようで、さて読み比べるか。2018/04/26

のっち♬

130
宗教を喰いものにし愚民を誑かすペテン師を痛烈に批判した性格喜劇の力作。題材自体のために当のエセ信者たちから宗教誹謗と批難され、上演禁止措置が取られた皮肉な経緯を持つ。主人が取り入られて腑抜け状態のところを今回機智を効かせるのが使用人ではなく妻というのがユニーク。反駁する小間使といい、女性陣の溌剌とした演技がタルチュフ以上に見どころになりそう。クレアントが「理性のはたらく範囲が狭すぎる」とアルゴンの極端気質に浴びせる鋭い批判は、終盤の"精神的制限で良心の呵責を緩和するイエズス会の詭弁"と共に近代的と言える。2023/10/16

松本直哉

32
狂人を装うハムレットと同じく、善人を装うタルチュフもまた、変装とまやかしに満ちたバロック演劇の典型的な肖像と言えようか。しかし、〈本当らしさ〉を求める古典劇の作法は、仮面の下にある本性をあばき、前半と後半でタルチュフは豹変する。そのきっかけとなるタルチュフとエルミールの会話の場面は、オルゴンに盗み聞きされることで、ハムレットにおける劇中劇のような役割。すべては幻想なのだ、ただ一つ国王の至上権を除いて。しかし王権もまたまやかしだったことは歴史が証明する。王のご機嫌を取らなければ生きられなかった劇作家の限界2022/01/31

さきん

30
タツチュフという偽善なる信徒が騙されている家族に寄生してくらしている。主人と主人の母を完全にだましきっていたので、他の家族の口を封じ、財産までそっくりいただきかけていたが、家族の様々な抵抗の試みがそうして、主人の目が覚め、話が急展開していく。日本にも、マインドコントロールされた家族惨殺事件があったような気がしてそれを思い出した。2018/12/15

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