出版社内容情報
ふとしたことから乞食のトムは宮殿の王子となり,ほんものの王子はトムのぼろ服を着たまま街へほうり出される.そこで二人が見たものは? 知ったことは? そしてどんな目にあったか? これはユーモア作家マーク・トウェーンの傑作で,哄笑と微苦笑と涙のうちに,読者をふしぎな楽しさに導いてゆく力をもっている.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けろりん
67
二人の愛娘に捧げたこの物語を執筆中、マーク・トウェーンは、その日に書いた分を家族に読み聞かせて、自らも大変楽しんだという。 読者も入れ替わった二人の主人公の先行きが気にかかって、貪り読んでしまった。運命の悪戯から数々の辛酸を舐める事となる王子のモデルは、ヘンリー八世の世子にして、かのブラディメアリーとエリザベス一世を姉に持つエドワード六世。短い治世ながら福祉に力を注いだ心優しい夭折の王へのオマージュ、史実と当時の庶民の生活や子ども達を取り巻く環境を織り込んだ冒険の物語を、村岡花子氏が香り高く翻訳した名作。2023/02/06
ベイス
67
随所に風刺と皮肉が利いていてグイグイ引き込まれる。乞食たちが、イギリスの法律の理不尽さを、酔っ払いながら告発する場面は震えるほどの感動を覚えた。「英国の法律っていうやつはえらいもんじゃねえか、世の中へ生まれてきて誰ひとり、毛すじほどの悪事をしたことのないあの子供たちのために、ひと口でいいから供養の酒を飲んでくれ」。そのとき突然、澄みきった声が響き渡ってきた。「きょうかぎり、その法律は取りのけられるぞ」「誰だ、どうしたんだ?」「余は英国王エドワードだ」。いやあ、素晴らしい。2021/01/03
モリー
62
「慈悲の本質には・・・・二重の恩恵がある。慈悲は、これを与える者をも受ける者をも幸福にする。最も力のある人ににあっては更に最高の徳である。慈悲は君主にとって、その王冠にも幾倍してふさわしいものである。」ーベニスの商人よりー🔖冒頭に置かれたシェークスピアの言葉の意味が、この物語全体を通して伝わってきます。2022/06/11
ゆかーん
46
朝の連ドラの『花子とアン』で印象に残った作品。村岡花子さんが翻訳した作品を読んでみたかったので手に取りました。実に文章が生き生きしています!王子の気持ちも乞食の気持ちも、それぞれバランス良く表現されていて、この時代の貧富の差をリアルに感じることが出来ました。『互いの生活を変えることで、二人の生活の重みを理解し、同情することを学ばせようとした』と書かれた著書の思惑は実にお見事!この教訓が自分を強くし、他人を優しく出来るのだと学びました。子供のための読み物だけでは勿体無い!大人になった今こそ読むべき作品です!2015/07/06
シュシュ
27
全くのフィクションだと思っていたら、史実に基づいた背景であることに驚いた。ユーモアもあって面白かった!乞食になった王子が誰にも自分が王子だと信じてもらえずに「フーフー第一世」とよばれてからかわれたり、乞食のトムが王子になって玉璽をクルミ割りに使っていたと告白する場面が可笑しかった。神父から物語を聞くのが好きだった乞食のトムが想像の翼を持っていたことが、トム自身を助けていたと思う。瓜二つの二人が入れ替わったことに誰も気づかない中、乞食のトムの母親だけが気づくところにほろりときた。慈悲深い結末がよかった。→2015/02/21