出版社内容情報
グラナダの丘に今もその姿を残すアルハンブラ宮殿．アーヴィング（1783―1859）はアメリカ公使館書記官としてスペインに赴き，偶然の幸運からモーロ人の築いた城に滞在した．宮殿の華麗かつ荘厳な姿とそこに暮らした幻想的な日々が，処々に伝わるさまざまな物語を織りまぜて，詩情豊かに綴られる．（全2冊）
内容説明
グラナダの丘に今もその姿を残すアルハンブラ宮殿。アーヴィング（一七八三‐一八五九）はアメリカ公使館書記官としてスペインに赴き、偶然の幸運からモーロ人の築いた城に滞在した。その幻想的な日々が、処々に伝わるさまざまな物語を織りまぜて、詩情ゆたかに綴られる。
目次
旅
アルハンブラ宮殿
歴史的交渉―筆者、ボアブディルの王位を継ぐ
アルハンブラの住人たち
大使の間
イエズス会図書館
アルハンブラの築城者、アルハマール
アルハンブラ宮殿の完成者、ユースフ・アブール・ハジーグ
神秘の部屋
コマレスの塔からの眺め〔ほか〕
1 ～ 1件／全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
seacalf
36
これは極上の読書。語り手の陽気さと溢れんばかりの幸福感がこちらにも移って愉快な気分になる。今や望むべくもない贅沢、なんと筆者はあのアルハンブラ宮殿に滞在することができたのだ。月光が誘い出す真夜中の宮殿内を自由に闊歩したなんて、それはそれはうっとりしたに違いない。まだおおらかさが残る時代、王宮の管理人アントニアおばさんに姪のドロレス、そしてお節介焼きのマテオらとの交流、筆者の喜びがほとばしりロマンと異国情緒たっぷりな描写の数々。これが面白くないはずがない。いつかグラナダを訪れる前に必ず再読したい。2017/04/19
拓也 ◆mOrYeBoQbw
31
紀行滞在記、歴史幻想蒐集。著者アーヴィングがグラナダへ旅しアルハンブラ宮殿に滞在した紀行文。それに加えて現地の人々や風俗、千一夜物語とも並ぶような現地の伝説や幻想譚も様々に収録された、ヨーロッパで旅行ブームを起こした程の珠玉の一冊。今の様な観光化されたアルハンブラではなく、街道には盗賊が跋扈し、捨てられた宮殿や館には浮浪者が住み着く時代です。スペイン文化に加え、長らく支配したイスラム系ムーア人（モーロ人）の文化が当時のヨーロッパにどれだけ影響与えたか、オリエンタリズムを上巻から十分感じられます。2017/01/25
syaori
31
アルハンブラ宮殿に住む、そんな夢のような機会を得た作者が描くアルハンブラの物語。少年時代、ハドソン川の土手でグラナダの内戦の物語などに血を熱くして以来、「夢幻的な都であり続けた」グラナダを訪れた作者は、幸運にも宮殿の一画に部屋を得ます。「この古い、夢見ているような宮殿には」「むき出しの現実を数々の幻想で包み込んでしまう、不思議な力が潜んでいる」という宮殿で見る夢は、多くの血が流れ悲劇性も帯びていますが優美で典雅。時がゆったり過ぎていくスペインの日常の様子もそんな雰囲気にとても合っていて、夢見心地で下巻へ。2016/06/14
ロッキー
31
『アルハンブラの思い出』を聴きながら、遠いスペインの地グラナダのアルハンブラ宮殿に想いを馳せる。著者がアルハンブラ宮殿を訪れ幸運なことから主となり宮殿の歴史や逸話を語る紀行＆滞在記。宮殿内の建物や広場の描写やまた挿し絵が素晴らしく、宮殿内の住人のエピソードも楽しいし、著者が言うように幻想的で魔法のかかった宮殿を歩いているようだった。ネットで宮殿の詳細を調べたり、埃をかぶった世界遺産のDVDを引っ張り出して観て、もう虜になっている。一度は訪れたい、というか行くよ。絶対に！下巻も楽しみだ。2011/11/27
壱萬弐仟縁
22
1832年初出。時折、線画の細かな風景画があり、イメージが沸く。淡く柔らかなタッチ。「どんなに貧窮のどん底にあろうと、スペインの人は、例外なく、自分は元をただせば高貴な家柄の出だと、それとなく自慢するものなのだ」（81頁）。自尊心の高い、祖先を敬う国民性なのだろう。６章イエズス会図書館（139頁～）。古色蒼然とした図書館。静かに、だれにも邪魔されずに、心ゆくまで年代記をひもとき、楽しい時間を過ごした。古文書室の鍵と、文書箱の鍵とを貸してくれたという（140頁）。理想の図書館だな。2013/10/13
