出版社内容情報
正義を愛する若き勇士ベーオウルフは,夜ごと襲い来る怪物グレンデルの悪業に苦しむデネ(デンマーク)の王の噂を聞き,海を渡って救援に赴いた.こうしてベーオウルフと怪物との間に壮絶な一騎打ちが始まる.スカンジナヴィアの伝説を題材に,英雄の武勇を力強くうたいあげた古英詩の記念碑的作品.待望の新訳.
内容説明
正義を愛する若き勇士ベーオウルフは、夜ごと襲い来る怪物グレンデルの悪業に苦しむデネ(デンマーク)の王の噂を聞き、海を渡って救援に赴いた。こうしてベーオウルフと怪物との間に壮絶な一騎打ちが始まる。スカンジナヴィアの伝説を題材に、英雄の武勇を力強くうたいあげた古英詩の記念碑的作品を待望の新訳でおくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
45
イェーアトの勇士ベーオウルフの勲を歌う叙事詩。若きベーオウルフがデネの王フロースガールを助けて行うグレンデル退治と、後年イェーアトの王になった彼の竜退治の顛末が語られます。グレンデルはカインの末裔で、戦士たちは戦いの前に創造主の加護を願いますが、物語はもっと異教的な価値観のなかで展開するのに驚かされます。華々しい勲の通奏低音として流れるのは血で血を洗う争いや結婚(同盟)の失敗、戦争と親族の死。最後、それが一人の老女の詠じるベーオウルフ追悼の歌と重なり、こうやって英雄は伝説になっていくのだろうと感じました。2017/03/14
絹恵
38
相手が剣を用いる術を知らないのなら、自身も剣を持たずに、拳で闘うことを選ぶ精神が、彼を勇者として歩ませて、英雄としての資質を持ち合わせる所以なのだと思います。人々はその彼という完璧な人間のなかから神を見出そうとしたのだと感じます。それでも彼を以てしても、いや彼の存在で焔の歴史は築かれていきます。(PP新編集版6話/槙島)2014/12/02
マウリツィウス
25
【古英語叙事詩ベーオウルフ】英訳範疇から逆導入した翻訳痕跡を踏まえる-『ニーベルンゲンの歌』同様にドイツ語訳化された新教主義を投影できるかもしれないがその継承意図を把握-『新約聖書』古英詩を定着語化出来る。よって《新約主義》を内包-古英語ベーオウルフ遺産を再度解釈出来るだろう。文豪ゲーテをも迎えた『新約聖書』と《英国叙事詩》は矛盾しない。ドイツ語詩人たちの系譜意味をも内在考察-ベーオウルフは深層心理に眠る《狼表象》を意味しない。そして新約聖書系譜論をも把握に仕組むことも出来る。/ベーオウルフは猛る咆哮と調2013/10/16
fseigojp
18
映画原作 アンジェリーナ・ジョリーの怪演がよかった ダーク・ファンタジーの原型か2016/05/25
彩菜
16
ゲルマンの英雄叙事詩。うーん、一応ゲルマンものなんですが、成立年代のせいか、かなりキリスト教道徳の影響が見られ、熱く激しいゲルマン魂は影を潜めています。ちょっと自分の今回の期待から外れました。ごめんなさい。それでも英雄叙事詩としての美しさは随所に見られ楽しめます。一番美しかったのは「運命とは成るが如くにしかならぬもの」と言うベオウルフがそれでも自身の運命(最初の武勲と最後の死)に変わらぬ勇気を持って最善を尽くす処でしょうか。運命と運命を切り開く人間との間の相克の、その火花に彩られた輝きは眼に眩しい程でした2021/04/11