出版社内容情報
産業革命の荒波にぽつんととり残された田舎町クランフォード.浮世ばなれしたこの町に日々をいとなむ「淑女」の面々は,ちょっと風変りだけれど皆,底ぬけに善良な人たちばかり.イギリスの女性作家ギャスケル夫人(一八一〇―六五)が絶妙な味わいの人情噺さながら,ユーモアとペーソスたっぷりに語る女の世界.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
186
クランフォードという 女性がほとんどの町の 上流階級の日々を描いた物語である。 英国の田舎町の人情噺とでも言うべきだろうか。ひどくのどかな交流が なぜか 懐かしい。 平穏な 空気が 心落ち着く 単調だが 心暖まるエピソード集だった。2018/04/24
ケイ
141
少しミス・マープルを思い出した。田舎町にだって様々な人間模様があるし、座っていても色んな事がわかるのだってこと。語り手のメアリーは、気付けば本当に女だけになってしまう街の親戚をしばしば訪ねる。オールド・ミス軍団だから、みんなミス〜なんで人が多い。でなければ未亡人。既婚者もいるけれど。小さな事を一喜一憂しているようでいて、実は身分制や破産、身内のことなど沢山の問題が抱え込まれている。慎ましく暮らしていても結局尻すぼみ、微妙に後ろ向き。そんな街に男性がくると、さっとさりげなく華やぐ。そんな女達が愛おしくて♪2017/02/17
扉のこちら側
80
2017年53冊め。【267/G1000】イギリスの片田舎が舞台で、オールドミスや未亡人達の小さな社交界での話である。そこで起きる大事件や悲劇的な事件は穏やかなユーモアが溢れている。破産しそうなのに農民に施しを与えたりと、人情噺に思えるその裏側にあるのは見栄と階級意識。語り手のメアリーが町の住人ではなく、そして若いがために老嬢達とうまく距離をとっているのがよい。 2017/01/19
NAO
66
イギリスの片田舎の世の荒波からぽつんと取り残されたような小さな町クランフォード。その町に住む浮世離れした老嬢や未亡人の閉鎖的な社交界を目で見つめる語り手メアリーの視線は、つかず離れずで、優しさとユーモアにあふれている。デボラと本に関して口論するブラウン大尉の愛読書がディケンズの『ピクウィック・ペーパーズ』であるように、この作品にちりばめられたユーモアは、とてもディケンズ的だと思う。いくつもの事件が起こり、最終的には大団円を迎えるのだけれど、騒動の中心人物なのに、淑女たちが毛嫌いしている新興階級⇒2017/06/26
こばまり
60
どうせ女どもがちまちまと…と頁を開けば、果たしてその通りであったのだがみるみる引き込まれた。人の善意は例え創作の中でも心をまろやかにするものだ。巻末の人となりを読み、作者が実兄をモデルとする人物を作品にいきいきと登場させており切なさを覚えた。2017/07/03