出版社内容情報
イギリスの作家モームが,世界文学のなかから小説10篇を選び,その作者と作品について実作者の視点から論じたユニークな文学論.小説を読む楽しさを主眼に,作者の生れ育った環境や性格,日常生活や人間関係などからその人間像に迫り,作品が生みだされる過程を生きいきと描く.高慢と偏見,赤と黒,戦争と平和など.(解説=菅野昭正)
内容説明
「結局のところ、作家が読者にあたえ得るものと言っては、自分自身をおいてほかにない」とモームは言う。(下)では『ボヴァリー夫人』『モウビー・ディック』『嵐が丘』『カラマーゾフの兄弟』『戦争と平和』の五篇について語った後、作家十人がそろって出席する想像上のパーティが開かれる
目次
7 フローベールと『ボヴァリー夫人』
8 ハーマン・メルヴィルと『モウビー・ディック』
9 エミリー・ブロンテと『嵐が丘』
10 ドストエフスキーと『カラマーゾフの兄弟』
11 トルストイと『戦争と平和』
12 結び
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いちろく
27
作家が生み出した作品が自身の分身ならば、作家自身について追求していく事は結果的に作品そのモノの理解に繋がる。そのコンセプトは下巻も変わらず。「ボヴァリー夫人」「モウビー・ディック」「嵐が丘」「カラマーゾフの兄弟」「戦争と平和」について、W.S.モームさんが切り込む。上下巻合せて10作品10人の作家さんに着いて描かれてきた書評が、最後に物語として繋がった瞬間は歓喜でした。ただ、もっと若い時にこの本に出会っていれば、海外文学に対する自分の中の印象がもっと違ったモノになっていたはず。その点だけは、悔いが残る。2016/04/06
きゃれら
17
作家の評伝はたいていその作家及び作品を深く愛する筆者の手によるから、作品の欠点だったり作家の人間性の不都合なところは手加減されてるものだが、本書は同業者である筆者が容赦なく書いている。あまりにも辛辣な箇所もあり、本当は嫌いなの?とさえ思うことも。確かに作家本人たちはあまりお知り合いになりたくない感じではある。しかし作品の欠点は筆者が繰り返すように真価を貶めていないし、かえって魅力を引き立てていたりする。モームさんは皮肉・逆説が得意?読了後はこれらの作品を再読したくなったから、さすがというよりないのかも。2023/07/15
ソングライン
15
下巻でも、作者の生涯をその恋愛、性癖、収入まで詳細に語り、それらが作品にどのように影響したかを述べていきます。時に、辛辣な言及もありますが、巨匠たちへの尊敬、作品への愛が感じられます。下巻ではフローベル「ボヴァリー夫人」、メルヴィル「モウビー・ディック(白鯨)」、エミリー・ブロンテ「嵐が丘」、ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」そしてトルストイ「戦争と平和」を取り上げています。2020/02/28
花乃雪音
13
モームが採り上げた小説はイギリス4篇、フランス3篇、ロシア2篇、アメリカ1篇となる。このリストはアメリカの大衆雑誌『レッドブック』に依頼されて作ったということを知るとアメリカの小説を1つは入れるべきではないかという雑誌側かモームの思いがあったのではないかと穿った見方をしてしまう。もっとも、アメリカの1篇はメルヴィル『白鯨』と納得いくものだった。2020/02/07
loanmeadime
12
下巻では、フローベール、メルヴィル、エミリー・ブロンテ、ドストエフスキー、トルストイの五人が取り上げられます。真ん中の三人を特異な一群の小説に含まれる、としています。最後に結びとして、上巻に登場の五人も入れた仮想パーティーについての記述があります。この中で常識人のジェイン・オースティンがエミリー・ブロンテに話しかけるシーンがありますが、全くかみ合わないのが笑えました。モームの小説愛を強く感じた上下巻でした。アンナ・カレーニナとか取り上げられた十作以外も読もうと思います。2020/02/22