出版社内容情報
1896年パリ,詩人イェイツに勧められシングはアイルランド北端アラン島への旅を決心する.岩と石からなる荒涼としたアランモア島の風景,島民たちの純朴な気風,古い伝説,迷信.島での生活はシングをラシーヌの桎梏から解き放つ.劇作家シング誕生への大きな転機となったスケッチ風紀行文集.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おおた
19
栩木さん訳が全然手に入らないのでこちらを。アイルランド版遠野物語というか、もっと民衆と交わって歌ったり大嵐の中を船に乗ったり、彼らの物語を聞く。文化格差は大きいけれども、アラン島にはアラン島の文化がある。豚が美女に化けて馬車に乗せてくれと懇願したり、妖精が子どもを連れて行ったり、老婆が死んだ次男の若かりし頃を見てしまう。アイルランドというよりはスコットランドに近い、そんな場所にも昔からの興味深い生活がある。旧字で分からないところは栩木先生の訳で読み直したい。2019/04/27
papain.papain
3
1898年頃のアイルランドの僻地、アラン島の紀行文。「遠野物語」+「街道をゆく」のような一冊。同国出身夭折の劇作家シングによる島や島民・風俗の描写は淡々としつつ、ときに詩のようで、味わい深い。出版が1937年で、使用されている漢字が今と随分違い読みづらくもあるが、慣れると面白い。梨木香歩さん推薦の書。2022/08/20
y
1
どういう経緯で読みたい本に登録したのか忘れてしまいましたが、リアルでもネットでも売っておらず、古書店をちらっと見ても無さそうだったので、図書館で借りました。 アイルランドには行ったことはないのですが、岩がちな土地や鈍色の空、荒々しい海などが目に浮かぶようでした。 土地の人たちとの会話や話がおとぎ話のようで、不思議な感じがしました。 旧字体の漢字はやや読みづらくはありましたが、かえってその時代の雰囲気を伝えているようで味わい深かったです。 手元に置いておきたい一冊です。2024/03/04
三月★うさぎ
1
アイルランドの音楽や物語は、厳しい生活から生まれてきたんだなぁと改めて思う。厳しい中での歌や、踊りや音楽なんだ。ダンスの名手というおじいさんの踊りを見てみたい。今年はアイルランドの文化や生活についての本も読んでいきたい。
デンプシー
0
司馬遼太郎の愛蘭土紀行度々触れられている シングのアラン島をやっと読めた。 k市図書館に感謝。妖精と共に住んでいるような20世紀末初めのアラン島ー岩でできた ブリテン最西辺の島の原始的な島民の生活を愛したシングの眼差しが良く感じられる。 様々な伝承の物語が面白い。 シングがこの島に持つセンチメンタルな気持ちが淡々とかかれている。明治の日本人が 我が心のアラン島と共に書いたのは どういう事だったのか 。2017/01/11